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PLAYBACK B.LEAGUE|沖縄アリーナ誕生、アジア特別枠の導入…コロナ禍で見せた新たな挑戦【2020-21】

2025.09.08

見どころ・レポート

初優勝の喜びを爆発させる千葉Jの選手たち【(C)B.LEAGUE】
 

「りそなグループ B.LEAGUE 2025-26 シーズン」、B.LEAGUEは大きな節目となる10シーズン目を迎える。日本のバスケットボール界に新たな歴史を刻んだあの日から、早くも9つのシーズンが過ぎ去った。熱狂のチャンピオンシップ、語り継がれる名勝負、スター選手の誕生、そして地域に根差したクラブが紡いできた数々のドラマ。この連載では、10年目の未来へとつながるBリーグの軌跡を、シーズンごとに紐解いていく。今回は、新型コロナウイルスの影響による制限が続くなか、それでもチャレンジすることをやめなかった「B.LEAGUE 2020-21シーズン」を振り返る。

オフシーズン: 新チェアマン就任とアジア戦略、コロナ禍で見えた新たなリーグの形



アジア特別枠を活用して三遠でプレーしたラベナ【(C)B.LEAGUE】

 

 2019-20シーズンが新型コロナウイルスの影響で不完全燃焼に終わったBリーグは、かつてない変化と挑戦のオフシーズンを迎えた。リーグの新たな舵取り役として、千葉ジェッツを強豪クラブへと成長させた島田慎二氏が第3代チェアマンに就任。その新体制の下、将来を見据えた大きな一歩が踏み出された。

 その象徴が「アジア特別枠」の新設である。この制度を活用した第1号選手として、“フィリピンの至宝”と称されるサーディ・ラベナが三遠ネオフェニックスに加入した。 Bリーグから海外、特にアジアへの挑戦も活発化し、中村太地が韓国のKBL(韓国バスケットボールリーグ)に移籍するなど、アジア圏での選手の流動性が高まることとなった。

 また、前シーズンにB1からB2への降格がなくなった影響で、B1は20チーム、B2は16チームで構成されることに。 これに伴い、B1、B2ともに従来の3地区制(東・中・西)から2地区制(東・西)へとフォーマットが変更された。

 シーズン開幕に際しても、コロナ禍の影響は色濃く残った。政府の方針に従い、当面は入場者数を収容人数の50パーセントに制限してのスタートとなった。 シーズンを通して、17試合がリモートゲーム(無観客試合)となり、代替開催も叶わず中止となった試合は43試合にのぼった。

 一方でファンが楽しみにしていた「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2021 IN MITO」は本戦の開催こそ中止となったものの、コンテスト競技のみオンラインで実施。TIPOFFカンファレンスやシーズンを締めくくる「B.LEAGUE AWARD SHOW 2020-21」も同様にオンライン開催となり、ファンとリーグが繋がるための新たなイベントの形が模索されたシーズンでもあった。

B1レギュラーシーズン: コロナ禍と初の2地区制、変化の中でも繰り広げられた激闘



コロナ禍においても試合の熱量はより高まっていった【(C)B.LEAGUE】
 

 レギュラーシーズンでは、各地区上位3チームとワイルドカード2チームに与えられる「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2020-21」進出の権利をかけ、激しい争いが繰り広げられた。

 東地区を制したのは、リーグ最高勝率を記録した宇都宮ブレックス。比江島慎やライアン・ロシターといった主軸に新戦力のLJ・ピークが加わった布陣は厚みを増し、リーグトップの平均失点(70.8)を誇る堅守を武器に、2016-17シーズン以来となる4シーズンぶりの地区優勝を果たした。地区2位の座を巡っては千葉ジェッツと川崎ブレイブサンダースが最後まで熾烈な争いを演じ、最終的に43勝で並んだものの、新型コロナウイルスの影響による試合中止数の差から勝率でわずかに上回った千葉Jが2位の座を確保した。

新本拠地「沖縄アリーナ」が大きな話題を呼んだ琉球【(C)B.LEAGUE】
 

 一方の西地区では、琉球ゴールデンキングスが他を寄せ付けない強さを見せつけ、2位に6ゲーム差をつけて4シーズン連続の地区優勝を達成。シーズン終盤には、クラブの新たな象徴となる新本拠地「沖縄アリーナ」(現・沖縄サントリーアリーナ)が開業し、リーグに大きな活気をもたらした。西地区2位には、新加入のD.J・ニュービルが司令塔としてチームをけん引した大阪エヴェッサが入り、悲願のチャンピオンシップ初出場を決めた。そして最後の1枠を巡る争いはシーホース三河と名古屋ダイヤモンドドルフィンズによる熾烈なものとなったが、エース金丸晃輔が躍動した三河がこれを制し、3位に滑り込んだ。

 チャンピオンシップ出場の残り2枠であるワイルドカードは、いずれも東地区のチームが獲得。その1枠目は、新加入のジュリアン・マブンガや岡田侑大を擁し、リーグNo.1の平均89.2得点を叩き出した富山グラウジーズが掴み取り、こちらも初のチャンピオンシップ進出。もう1枠はサンロッカーズ渋谷が獲得し、4シーズンぶりの大舞台へと駒を進めた。



チャンピオンシップ: 千葉Jが“3度目の正直”で悲願の初優勝



過去2大会準優勝の千葉Jが“3度目の正直”で戴冠【(C)B.LEAGUE】
 

 2シーズンぶりのチャンピオンシップはディフェンディングチャンピオンのアルバルク東京が不在のなか、そのA東京に2シーズン連続で優勝を阻まれていた千葉Jが悲願の初優勝を果たした。

 富樫勇樹や帰化選手登録となったギャビン・エドワーズ、さらには新戦力のセバスチャン・サイズが主力を担った千葉Jは、クォーターファイナルで三河に2連勝。セミファイナルでは琉球を2勝1敗で破り、宇都宮との「日本生命B.LEAGUE FINALS2020-21」まで駒を進めた。

リーグ史に残る激闘を繰り広げた千葉Jと宇都宮【(C)B.LEAGUE】
 

 初の2戦先勝方式での開催となったFINAL。GAME1では、エドワーズとサイズがダブルダブルを達成するなど躍動した千葉Jが、85-65と快勝。しかし、続くGAME2は宇都宮に終始試合の主導権を握られ、59-84と大敗を喫することに。1勝1敗で迎えた運命のGAME3は大接戦となり、第3Q終了時点で50-50の同点。試合時間残り2分時点でも1点差という息詰まるクロスゲームとなったが、そこからシャノン・ショーターが8得点を挙げる活躍を見せ、最終スコア71-62で千葉Jが激闘に終止符を打った。

 BリーグチャンピオンシップMVPには、6試合で1試合平均13.5得点11.8リバウンドを挙げたサイズが選出。また、日本生命ファイナル賞にはチームをけん引し続けた富樫が選ばれた。

昇降格: 群馬と茨城がB1へ…拡大したB2プレーオフを制し、新たなステージへ



レギュラーシーズンから圧倒的な強さを見せた群馬【(C)B.LEAGUE】
 

 新型コロナウイルスの影響を鑑みて、2020-21シーズン終了後は、B2からB1に2クラブが自動昇格し、その他の昇降格は行わないことが決まった。そのため、B1残留プレーオフやB1・B2入れ替え戦、B2・B3入れ替え戦は実施されなかった。

 B1に昇格する2クラブが決まる「B2 PLAYOFFS 2020-21」が、今大会から出場チームが4チームから8チームに拡大。より激しさを増したトーナメントを制して昇格権を手にしたのは、群馬クレインサンダーズと茨城ロボッツ。そして、B2優勝の栄誉を手にしたのはレギュラーシーズン52勝5敗という圧倒的成績でB2東地区優勝を果たした群馬だった。

 群馬はセミファイナルで越谷アルファーズに連勝してB1昇格を決めると、ファイナルでは茨城ロボッツを2勝1敗で破り、B2優勝を果たした。B2プレーオフ最優秀選手賞には7試合で平均18.9得点6.4アシストを記録したトレイ・ジョーンズが選出。ジョーンズはB2レギュラーシーズン最優秀選手賞とのダブル受賞となった。

個人賞: 金丸晃輔が亡き実弟に捧ぐMVP初受賞…逆境を乗り越えたファンにも栄誉



初のMVP受賞となった金丸【(C)B.LEAGUE】
 

 2020-21シーズンの個人賞では、レギュラーシーズンベストファイブをジュリアン・マブンガが初受賞。藤井祐眞は2年連続2回目、ニック・ファジーカスは3年ぶり3回目、富樫勇樹と金丸晃輔は5年連続での受賞となった。なかでも藤井はベストディフェンダー賞とベストタフショット賞も受賞し、昨シーズンに続いて3つの個人賞を受賞する快挙を成し遂げた。そして、レギュラーシーズン最優秀選手(MVP)に選ばれたのは、三河のエース金丸だった。

 金丸はレギュラーシーズン53試合に出場し、平均16.8得点を記録。フィールドゴール成功率は49.3パーセント、代名詞である3Pシュートの成功率も46.6パーセントという驚異的な数字を残した。表彰式で金丸は同年に実弟を亡くしたことを明かし、「やっとMVP取ったよと報告したいです」と涙をこらえながら語った。

和装と洋装のミックススタイルのドレスアップ姿で登場した選手たち【(C)B.LEAGUE】
 

 新人賞ベスト5には、テーブス海、小酒部泰暉、寺嶋良、増田啓介、アイザイア・マーフィーが選出され、最優秀新人賞はテーブスが受賞。また、BREAK THE BORDER賞はついに開業した“夢のアリーナ第1号”である沖縄アリーナと、コロナ禍のシーズンを盛り上げたB.LEAGUEファンに贈られた。

 B1スタッツリーダーを見ると、得点はニック・メイヨ(21.5)、アシストはマブンガ(7.4)、リバウンドはジャック・クーリー(12.3)、スティールは川嶋勇人(2.4)、ブロックはアレックス・デイビス(2.2)、3ポイント成功率は狩野祐介(47.5%)、フリースロー成功率は金丸古川孝敏(91.0 %)が受賞。クーリーは2年連続、マブンガは2年ぶり2回目の受賞となったが、他の面々は初受賞というフレッシュな顔ぶれとなった。

文=バスケットボールキング編集部

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