【B.LEAGUE UNITED インタビュー】国際舞台を経験した選手&コーチが語る、世界に挑戦する意義
「2030年までにNBA選手5人輩出」という目標を掲げるB.LEAGUEでは、国際的な競技環境を経験することでリーグ全体の競技力底上げを目指し、有望な若手選手らを中心とした選抜チーム「B.LEAGUE UNITED」を結成。6月には「B.LEAGUE GLOBAL INVITATIONAL 2025」と題してオープンハウスアリーナ太田でオーストラリアのナショナル・バスケットボール・リーグ(NBL)選抜チーム「NBL SELECT」と2試合を戦い、7月にアメリカで「NBA 2K26 SUMMER LEAGUE 2025」に出場するチームとの練習試合をおこないました。
初の試みとなった「B.LEAGUE UNITED」の一員として活動した選手とコーチのインタビューをお届け。NBL SELECTをホームのオープンハウスアリーナ太田で迎え撃った群馬クレインサンダーズの中村拓人選手、細川一輝選手、淺野ケニー選手、今回、B.LEAGUE UNITEDのキャプテンを務めた今村佳太選手、およびアメリカ派遣から参戦した加藤嵩都選手(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、そしてチームを率いた水野宏太ヘッドコーチ(シーホース三河 アシスタントコーチ/オンコート通訳)に話を聞きました。
中村拓人選手、細川一輝選手、淺野ケニー選手(群馬クレインサンダーズ)

――まずは今回の活動全体を振り返ってください。
細川 海外のチームと対戦し、ハードな試合を経験できました。コミュニケーションや細かい部分の判断などを学ぶことができ、それらを今後の活動に活かしていきたいと思っています。
中村 普段ではできないことを経験させていただきました。寄せ集めのチームだったので、限られた練習でどのようにプレーの完成度を上げていくのか。所属チームではなかなかないことなので、新しいことを経験できたのは自分にとってプラスになりました。
淺野 世代別の日本代表以外では即席チームでプレーする機会がなかなかないので、短い期間でチームを作るという経験ができたのは本当に良かったです。海外の選手に高さやフィジカルのアドバンテージがある試合でした。国内では味わったことがないものだったので、それを経験できたことは良かったです。

――今回の活動を経て、自分なりに新たな発見があったら教えてください。
細川 自分はシューターとして試合に出ていて、スペーシングや動くタイミング、我慢することを意識していました。相手は味方のドライブを見ながらうまく合わせ、ノーマークを作り出してからシュートを放っていました。自分も相手や味方に合わせて動くことをより意識したいと感じました。
中村 僕は全体的にフィジカルの差を痛感しました。そのレベルの高さは今回の活動でしか味わえなかった部分だと思うので、僕たちがB.LEAGUEでプレーしていくなかでそれを上げていければ、チームとしてもいいパフォーマンスを発揮できると思います。そこでリーグ全体のレベルが上がれば、世界に通用するプレーヤーが増えていくのかなと。今回の経験をチームに還元できたらと思っています。
淺野 自分はセレクト(選抜)チームでの活動が少し苦手でした。自分を知らない人に知ってもらうことがあまり得意ではなく、今回の合宿も最初は難しかったのですが、徐々に自分のプレーを理解してもらえて、個性を出せるようになりました。そこは今回の活動ですごく成長した部分だと思っています。群馬でもどのように自分の良さを出していくのかは、昨シーズン以上に意識していることです。
――中村選手にお聞きします。多くの選手が「フィジカルの差」について話していました。体格の差があるとはいえ、その差は縮められる、埋められるものなのでしょうか?
中村 体は相手のほうが大きかったですし、僕たちが急に大きくなれるものではないので、体格差については難しいかもしれません。ただ、僕がプレーして感じたのは、彼らは自分たちから体をぶつけてくることが多かった。こちらが体をぶつける前に当ててくるということです。そこは逆に僕自身が先にコンタクトを起こせば、よりフィジカルに戦えるのかなと。サイズはないかもしれませんが、やり合える部分はあると思っています。体をぶつけてきた時にいなす技術があれば、世界との距離は縮められるはずです。

――すでに群馬での活動に戻っていますが、例年と比較して体やコンディションは違いますか?
細川 自分は最初の練習から体が動いていると感じます。昨シーズンよりもいい形で練習できています。
中村 僕もです。体の部分はもちろん、マインドの部分でも準備できています。
淺野 僕もコンディションはすごくいいです。体という部分では、体重がこれまでで一番重くなっています。ただ、海外の選手と対戦した時、まだまだ足りないと実感したので、そこのトレーニングは今も続けています。
――細川選手と淺野選手はアメリカでワークアウトを実施したようですね。淺野選手の体が大きくなったという声も聞かれました。
淺野 一輝さんはずっと一緒にいたからわからないでしょう(笑)?
細川 何もわからないです(笑)。
淺野 シーズン終了後にヘッドコーチをはじめとしたコーチ陣と話をして、「体を大きくしてほしい」と。この夏で約3キロは増えましたね。ただ、体重が増えて動けなくなったら意味がないので、これまでのアジリティを保つことを意識していて。今はいい状態でプレーできています。

――今回の経験は自分自身にとってどのような意味を持つのか、そしてそれをどのように活かしていきたいのか聞かせてください。
細川 いつも以上にハードワークしなければいけないと思いました。毎日の練習、一つひとつのトレーニングでどれだけ追い込んでいけるのか。これからはそこに集中したいです。自分たちがこの夏に経験したことを表現できれば、チームのレベルもより上がっていくと思うので、意識して取り組んでいきたいです。
中村 この機会がすごくいいきっかけになったと思います。海外のチームを相手にやれる部分もありましたけど、レベルの差をすごく痛感しました。今はそれをモチベーションにして取り組めています。僕たち3人がこの経験を群馬に還元することによって、好循環が生まれると思っています。長いシーズンにおいてスタンダードを上げていければ、自ずと結果はついてくると思うので、今シーズンの開幕をすごく楽しみにしています。
淺野 アメリカに行くからこそ、しっかりと学んで帰ってきたいという思いでした。でも、帰国してから(藤井)祐眞さんとワークアウトすることが多く、そこでも学ぶことが多くありました。普段から常にアンテナを張って、自分から学ぼうとする意識を持って取り組んでいけば、より成長できると思います。自分が下から押し上げていくことでチームとしても強くなっていくのかなと。若手の自分がそういった意識で取り組んでいきたいと思うようになりました。
――中村選手が一番「やれる」と手応えを感じたのはどのようなプレーだったのか聞かせてください。
中村 リングにアタックしていくプレーです。アメリカでは少し難しいこともありましたけど、逆に現地に行って学ぶことが多かったです。B.LEAGUEでも表現できれば、より良いパフォーマンスを発揮できると思っています。

――今後はどのようなプレーヤーになっていきたいですか?
細川 外のシュートだけではなく、力強いドライブやそこからのキックアウトをより増やしていければ、自分の得意とする3Pシュートをもっと楽に打てるはずです。ディフェンスでもよりハードにプレーできれば、チームからの信頼も厚くなると思っています。
中村 僕はディフェンスを自分自身の1つの強みとして、よりハードに、よりフィジカルにやっていきたいので、まずはそこのレベルを上げること。群馬にはタレントがそろっているので、自分はチームをコントロールして、ガードとしての役割を果たせればいいなと思っています。B.LEAGUEで屈指のガードと言ってもらえるようなプレーヤーになりたいです。
淺野 2メートル近い身長があるので、オールラウンダーになりたいと思っています。コーチから求められることはいろいろありますけど、「今はこれが足りないからやってほしい」と言われても対応できるような選手になりたいです。ただ、世界的に見たら大きくないので、しっかりと体を作って、ディフェンスでは1番(PG)から4番(PF)までマークできるようにならなければいけない。あらゆる部分で成長して、オールラウンドに戦える選手になりたいです。
――個人としての今後の目標を聞かせてください。
細川 個人としては日本代表でプレーしたいです。自分にとってディフェンスとシュートが日本代表に呼ばれるのか、呼ばれないかのカギだと思います。そこにフォーカスしながら取り組んでいきたいです。
中村 僕も日本代表を目標としているので、そのために群馬でより良いパフォーマンスを発揮したいです。特に今回の活動でガードとして必要な要素を肌で感じることできたので、そこをレベルアップできれば、より日本代表へ近づけるのかなと。ディフェンス面はもちろん、PGとしてリングにアタックする能力も伸ばしたいです。また、自分の視野が広がったと思っていて、今後もいろいろなことに挑戦していきたいです。
淺野 昨シーズンは出場機会があまり得られず、個人的に悔しい思いをしたので、今シーズンはプレータイムをつかみたいです。まずはB.LEAGUEで爪痕を残せるように頑張りたいと思っています。将来的にはステップアップを遂げて、日本代表を目指せる選手になりたいです。
――B.LEAGUE UNITEDの活動は1年目だったこともあり、収穫と課題の両方があったと思います。選手側からリーグへ向けて何か望むことはありますか?
細川 開催の時期の問題ですかね。僕たちはB.LEAGUEのシーズン終了後、NBLとの試合までに少し間が空いてしまって、そこに向けて体やコンディションを整えるのが難しかったです。
中村 難しい部分もあったと思いますけど、実際に経験して感じたのは選手としてプラスでしかないということ。参加できて本当に良かったです。
――新シーズンへの意気込みを聞かせてください。

細川 昨シーズンは本当に悔しい経験をしました。ただ、新しい選手が加わったことは自分たちにとってプラスなので、日本一を目指すだけだと思っています。
中村 移籍1年目の挑戦をすごくポジティブに捉えていて、群馬で優勝を目指したいと思っています。そのために自分のプレーでチームを底上げしたい。どんなことにも挑戦して、すごくいいシーズンになったと思えるように頑張りたいです。
淺野 僕たちには素晴らしいメンバーがそろっていて、勝たなければいけないチーム。まずチャンピオンシップに進出して、昨シーズンを超える成績、そしてその先の優勝を目指せるように頑張りたいです。
――9月12日にはオープンハウスアリーナ太田でG League Unitedとの試合が控えています。
中村 NBLとの試合では、シーズン開幕前にオプアリでプレーできたのはうれしかったです。今回もアピールの場というか、ファンの皆さんに少しでも知ってもらう意味でもすごくいい機会だと思っています。
淺野 群馬ファンの方たちが多く来てくれて、NBLとの試合はホームゲームのような感覚でした。太田市はバスケットボールの街を目指しています。国際試合をこの場所で開催できるのは僕たちにとってもうれしいことです。
細川 ファンの皆さんは今まで以上に自分たちのことを期待してくれていると思います。そういったなかでどれだけ自分たちを表現して、プレーできるのかが大事だと思うので、試合に向けてしっかりと準備していきたいです。

加藤嵩都選手、今村佳太選手(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)

――B.LEAGUE UNITEDでの活動の振り返りから聞かせてください。
今村 トライ&エラーを繰り返しながら初めての取り組みでした。個人としてはすごくありがたい期間になったというのが率直な感想です。参加した選手、コーチ、スタッフがそれぞれのチームに戻って結果を出すことによって、プロジェクトの意義が現れると思っています。すべての練習試合でいろいろな発見がありました。楽しかったですし、すごくいい経験をさせてもらいました。
――加藤選手はアメリカ遠征からの合流でした。昨年は個人でラスベガスのショーケースに参加していたようですね。
加藤 日本のバスケットボール界に大きな影響を与えるプロジェクトだったと思います。アメリカでは、フィジカルやスピードはもちろん、メンタルやマインドセットにおいてもすごく強気にプレーできると感じました。以前からエージェントの岩野(健次郎)さんに「海外でのプレーはすごく刺激的な経験になるよ」と言われていました。僕の武器とするスピードが海外でどれだけ通用するのかはすごく気になっていました。今後も機会があれば、積極的にチャレンジしていきたいです。
――今村選手はこれまで、オフシーズンを海外で過ごす機会はありましたか?
今村 ないですね。計画したことはありますが、日本代表活動と重なってしまって。早い段階からスキルコーチやストレングスコーチと一緒にトレーニングすることが多かったです。今回実際に行くことができて、アメリカに毎年行きたいと思うほど、海外でしか得られない経験があるんだと、この年齢になっても感じました。
――今村選手はNBAチームとの対戦を終えて「8割は通用しなかった」と話していました。
今村 急造のチームということでチームケミストリーを作るのが難しいなか、それでもどうにか個人で打開しなければいけないシチュエーションがありました。特にサマーリーグ出場チームはディフェンスの強度が高く、1on1で打開するチームがすごく多かったです。そこで僕に限らずみんなが苦戦しました。逆に通用した2割はオフボールでの動きで、いかにズレを作れるのか。オフェンスではそこに手応えを感じました。
――加藤選手はいかがでしたか?
加藤 まず驚いたのはディフェンスでもオフェンスでも1on1の強度がすごく高いこと。加えて脚力やファンダメンタルがまず違うと感じました。日本ではあまり経験したことがありませんが、抜かれないようにディフェンスしても簡単に抜かれてしまう。コンテストしてもそれを上回るスピード力を持っていて、まずは練習量から全然違うんだろうなと肌で感じました。
――加藤選手がアメリカで高い評価を受けたと聞きました。今村選手はどのように見ていましたか?
今村 スピードというか、平面で一番戦えていたのはタケ(加藤)だと思います。日本はもちろん、アメリカでもスピードはダントツだったのかなと思っています。ただ、タケが全力で出すスピードと、彼らが出すスピードは違って、相手は無理をしていないというか。タケが100パーセントなら、相手はそれがスタンダードであって、すぐにアジャストしてきます。スピードの出し方はすごいなと感じましたね。
加藤 こう言ってくださってうれしいですけど、全然そんなことなくて。自分としてはほとんど通用しなかったと思っています。最後の試合ではターンオーバーが7個ぐらいでしたから。

――活動を通じて、得られたものがあったら聞かせてください。
加藤 負けはしましたけど、自信につながる部分はすごくありました。現地で味わったマインドセットを日本でも意識すると、よりフィジカルに、より強気にプレーできます。激しいプレッシャーに対して、どのようにスピードを活かすのかという部分。ドリブルだけではフィジカルで負けてしまうので、パスしてオフボールでのスピードを活かしたり、相手のフィジカルを無効化してから自分のスピードを最大化したりして、それらを模索しながら試合をこなしていました。コーチからもいろいろなアドバイスをもらいながら、スピードを活かすという点では大きな発見になりました。
今村 自分はスピードが武器ではないので、練習中にキャパシティを超えたスピード感とか、プレッシャーを1回でも出すように意識しています。少しずつその土台を作っていって、特にディフェンスのスタンダードを高めていく作業を練習から心掛けています。僕たちがいかに前からプレッシャーをかけても、ワンムーブでいなされ、突破されてしまう絶望感を味わいました。小手先だけではどうにもならないものなので、自分たちのキャパシティを大きくしなければ通用しないと思っています。オフェンスでは、「これが自分の生きる道」だと感じたのはオフボールの動き。そのクオリティを上げたら通用する部分があると感じました。自分がフリーになるためにどのように動くのか。アメリカで学び、日本で実践している部分でもあって、手応えを感じているので、試合でも見せられると思います。
――チームでの練習に合流し、体やコンディションの違いを感じますか?
加藤 アメリカでコンディションが整いました。高い強度の試合で、ある程度のプレータイムがありましたから。仕上がった状態でチームに合流できたので、それを自分の基準として練習に励んでいます。
今村 タケとも話したことなのですが、「自分たちで自分たちのスタンダードを上げていかなければダメだよね」と。客観的に見てもそうだと思いますけど、今の練習は8月のクオリティではないほど高いです。チーム全員が昨シーズンの悔しさを払拭したいと思っています。僕たちに限らず、高いクオリティで練習できているので、一味違ったプレーを見せられるはずです。

――コート内外で意識的に取り組んでいることはありますか?
加藤 取り組みというか、考え方や意識が変わりましたね。これまで個人として身体動作の練習をしていましたけど、プレーに落とし込むためには形でなく、考え方や意識が直接的に影響すると思っています。体作りという点では、筋肥大はしていなくて、もうすこし軽くして機動性や持久力をつけたいです。今はお米のグラム数を測って食べるようにしています。
今村 僕も食事には気をつけています。シーズンが始まると、体重が減りがちなので、食事の部分を今からルーティン化というか、ある程度の量を決めて、それを続けていくように意識しています。プレー面ではすべての練習や自主練でゲームライクにしようと思っていて。アメリカから帰ってきて、ムービングやシューティングの練習はすべてフルスピードです。試合よりも早いスピードで、どれだけ確率よく決められるのかを意識しています。自分のスタンダードを上げているつもりですけど、これに満足せず、どれだけクオリティを高めて、練習以外の時間でレベルアップできるのかを考えながら取り組んでいます。
――今回の経験を踏まえて、自分自身の将来についてどのように思い描いているのか聞かせてください。
加藤 日本でプレーするにしても、絶対に海外での刺激が必要だと感じました。海外に行くチャンスがあれば、どんどんチャレンジしていきたいです。プレーヤーとしては、対戦したトロント・ラプターズにジャマル・シャッド(※185センチのPG)という選手がいて、僕も彼のような選手になりたいなと。日本でも彼のスタイルを意識してプレーしていて、チームのシステムに沿ってゲームメイクできるようなガードになりたいです。今シーズンは10得点10アシストという目標があるので、自分の武器を見せつつ、味方を活かしていきたいと思っています。
今村 僕もチャンスがあれば海外に行きたいと思っています。アメリカで対戦した選手たちにどうすれば勝てるのか、彼らの上をいくためにどうプレーしていくべきなのか、どういう日々を送るべきなのか。自分たちのスタンダードのレベルを上げる必要があります。自分に厳しく、高い目標を持って取り組んでいくことで、その差が縮まっていくと思います。僕たちは経験した高いレベルを忘れることなく、プレーしていくべきだと感じました。自分はハンドラーの役割やクリエイトする部分はもちろん、先ほども話したオフボールの動きがメインになっていきます。いろいろな選手に合わせられるのが僕の良さだと思っているので、もっと周りの選手を巻き込んで、それぞれの良さを出せるようにプレーしたいです。

――B.LEAGUE UNITEDでの活動について、今後リーグ側に期待することがあれば聞かせてください。
今村 まずは一過性で終わることなく、今回の活動を今後も続けてほしいです。海外のチームを招致することもそうですし、自分たちが海外に行くこともそうです。こういった機会を得て、もっと成長したい、いろいろな刺激が欲しいと思う選手は多くいるはずです。選手選考の部分で、外国籍選手がB.LEAGUE所属選手ではなかったので、B.LEAGUE UNITEDと呼んでいるからにはB.LEAGUEに所属する外国籍選手が参加したい取り組みにしなければいけないと思います。B.LEAGUEは2030年までにNBA選手5人輩出ということを掲げていますよね。それは外国籍選手にも同じことが言えるのかなと。外国籍選手ともコミュニケーションを取って、アプローチする必要があると思っています。日本代表の選考とか、様々な兼ね合いがあって難しいんだと思いますけど、どの選手も参加したいと思えるような取り組みになっていくことを期待しています。
加藤 活動自体はすごく満足のいくもので、試合に集中できるスケジュールが組まれていました。選手選考の部分は佳太さんが話してくれたとおりですね。海外チームと差がありすぎてしまうと、得られるものも少なくなってしまいますから。
――IGアリーナという夢のアリーナで新シーズンを迎えます。最後に意気込みをお願いします。
今村 最大収容人数が1万5千人を超えるアジア最大規模の素晴らしいアリーナです。この環境をどのようにするのかは自分たち次第。お客さんが来たいと思えるようなバスケットボールを見せなければいけないし、勝つことでも集客につながります。まずは自分たちが責任を持って戦わなければいけません。変革のシーズンだと捉えているので、その変化を楽しみながら優勝を狙っていきたいです。貴重な経験を積んだ僕たち2人がチームを引っ張って、ファンの皆さんに素晴らしいプレーを見せたいです。
加藤 環境面を含め、すべての準備が整っているシーズンです。IGアリーナにふさわしいチームにならなければいけません。素晴らしい選手たちがそろったので、日本一を実現できるチャンスはあります。「B.LEAGUEでは名古屋ダイヤモンドドルフィンズがカッコいいよね」と言ってもらえるようなチームを目指していきます。
水野宏太ヘッドコーチ(シーホース三河 アシスタントコーチ/オンコート通訳)

――B.LEAGUE UNITEDを率い、大学時代を過ごしたアメリカへ行き、NBAのチームと対戦しました。率直な感想から聞かせてください。
水野 当時はアスレチックトレーナーを目指してアメリカへ渡りましたが、現地では今の僕のようなキャリアを形成する方が多くいました。短大からウェストバージニア大学に編入し、そこでコーチングについて学びつつ、バスケットボール部の学生マネージャーを2シーズンにわたって務めました。大学卒業後は大学院に進む予定でしたが、リンク栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)からお話をいただき、プロキャリアを始めました。いつか海外に挑戦したいと思っていましたが、なかなかそういったチャンスが訪れませんでした。今回はB.LEAGUE UNITEDのヘッドコーチという役職で、コーチを目指すきっかけを与えてくれたアメリカに来られて、高いレベルでコーチングするチャンスをいただけてすごくうれしかったです。
――海外を経験することの意義は何だと思いますか?
水野 2つあると思っていて、1つは知らないことを知ることができる。例えば、日本のバスケットボール界でもいいものがありますが、ただそれ1つだけではなく、違う世界も知ることができます。僕自身はかつて様々なコーチに出会い、いろいろなスタイルがあって、すごく奥深いものだと教えてもらいました。あとは言語の部分。自分に通用しないことが多い環境で挑戦できます。海外に行けば、コンフォートゾーン(快適な空間)から抜け出さなければ何も生まれません。今まで知らなかったものを知って、感じ得なかったものを感じることによって、自分の成長につながると思っています。
――コーチの立場として、通常のオフシーズンはどのように過ごすことが多いですか?
水野 まずはシーズンを一度リセットして、家族と向き合う時間を作っています。家族と過ごすことでコーチングのやり方や感覚が変わってきて、妻や子どもから教えてもらうことも多くあるので、オフシーズンはこの時間もすごく重要だと思っています。バスケットボールに関しては勉強の時間に充てています。シーズンを振り返ったり、クリニックや国内外のウェビナーに参加したりしています。今シーズンはライアン・リッチマンHCの人脈を頼りにアメリカへ行き、WNBAの練習を見学させてもらったり、彼のエージェントを通じて有望な選手たちのワークアウトで勉強させてもらったりする予定でした。その準備を進めていたところB.LEAGUEからお話をいただき、家族を含めいろいろな方に相談しました。こういった機会は滅多にもらえるものではないですし、次に同じようなチャンスが訪れるとは限りません。チャレンジしようと決め、お話を受けさせていただきました。
――B.LEAGUE UNITEDの指揮を執り、自分自身としても新たな発見があったと思います。
水野 まずは柔軟性を持ってコーチングする必要があることを学びました。お話を受けた時はどのような選手を招集できるのかわからない状況でした。そこからどういったコンセプトにするのかと、どういった選手たちでも合うように準備しなければいけませんでした。サイズがあまりないチームになるとわかり、そのメンバーでどのようなバスケットボールをできるのか考えました。メンバーがある程度わかっているなかでの準備と、その見通しが変わるかもしれないなかでの準備。後者は今までなかなか経験しないものでした。日本がサマーリーグのチームと対戦するのは、僕が日本代表のアシスタントコーチを務めていた2009年以来だったので、NBAからも質や内容を見られるだろうと思っていました。今回はコーチ陣に相談したり、自分でもいろいろ考えたりして、向き合う時間があったのは自分のためになりました。練習回数が限られ、NBAとの試合は2連戦、2日間休み、2連戦というスケジュールで、落とし込めることは限定的でした。取捨選択することが大事で、限られた練習だからこそ少しも無駄にできませんでした。その状況でも戦えるようにする一連の作業ができたのは良かったと思います。練習の機会が多くあれば良かったですけど、HCという仕事は決断の連続で、その決断に責任を持たなければいけませんから。自分にとっては財産になる経験だったので、すごく面白かったですね。
ただ、勝敗だけを考えたら誰1人として満足していません。今回の活動への満足度はありますけど、もっと準備すれば得られたものも多いと思います。必ずしも「これで良かった」と言いたいわけではありません。2030年までに5人のNBA選手を輩出するB.LEAGUEの目標があり、それを叶えるための手段の1つが国際経験を生み出すことです。0から1を生み出すのは、決して簡単なことではありません。改善する余地はありつつ、この一歩を踏み出せたのはすごく重要です。今回の活動が選手とスタッフにとっていい経験になり、それがB.LEAGUEの成長とか、世界に挑戦する人が増えることにつながっていけばすごくいいなと思います。
足りていないものを見るより、そこで得られるものの可能性を見て、それを得るために何を良くしなければいけないのか。そう考えるのはすごく意味のあることだと思います。人間は見つけた問題を解決するタイプの人と、見つけた問題を批評するタイプの人に分かれるのかなと。今回の活動に関しては、見つけた問題に対して何を改善しなければいけないのかということ。いろいろな方に可能性を感じてもらった上で、もっと良くしていくために何ができるのかを話し合い、より良いものにしていくことによって、目標達成につながっていくはずです。

――B.LEAGUE UNITEDでHCを務めることについて、リッチマンHCとコミュニケーションを取る機会はありましたか?
水野 この仕事を受ける前にライアンHCとも会話して、「もし挑戦できるならやったほうがいいんじゃないか」と言ってもらいました。彼だけではなく、僕と一緒にACを務めたダン(タシュニー/現仙台89ERS HC)もNBAでの経験があり、メキシコリーグで優勝したコーチで、どういう準備をしたらいいのか相談させてもらいました。ライアンHCはよくメッセージくれて、ダンに関しては練習に来てくれました。B.LEAGUE UNITEDにACとして参加したデイビッド・マクルーア(千葉ジェッツ)もサマーリーグでHCを務めたキャリアのある方なので、特に準備の段階で助けてもらいました。塩野(竜太/シーホース三河)コーチとは選手へのアプローチの仕方について相談して、彼からもらった気づきも多かったです。幸地(渉/長崎ヴェルカ)コーチはいろいろなアイディアを持ってきてくれて、オフェンスのセットプレーに取り入れたものもありました。いろいろな人の力を借りながらチームを作ることができたので、そこはすごく良かったと思っていると同時に、AC3人への仕事の割り振りというか、やってもらえることをしっかりと作れば良かったという反省点もあります。
――B.LEAGUEが目指す世界2位のリーグに向けて、コーチとしてどのようなことが必要だと感じますか?
水野 海外出身のHCが多くなってきているなか、桶谷(大/琉球ゴールデンキングス)HCや大野(篤史/三遠ネオフェニックス)HCといったコーチがしっかりと結果を残しているのは素晴らしいことです。日本人コーチがこのリーグで戦っていける状況であることはすごく大事です。もちろん、ライアンHCのACを務める僕のように、海外出身の優秀な指導者から学ぶことも必要だと思います。いいものを学びつつ、自分たちの哲学を磨き上げ、競争し続けることはすごく重要です。今はライアンHCと一緒に仕事ができてすごく幸せですけど、将来的には自分もまたHCとして彼らと戦いたいと思っています。B.LEAGUEの目標を達成するために自分たちの基準を上げていくこと。それは一人ひとりの選手はもちろん、コーチにも求められることです。
――自身の今後の目標を聞かせてください。
水野 コーチの仕事に携わっている以上、HCとしてもう一度、B.LEAGUEでチャレンジするのが目標です。2009年から2011年にかけてACを務めた日本代表にも関わりたいと思っています。ただ、僕にも家庭があって、仕事のキャリアだけが僕の人生ではありません。簡単には言えませんけど、また新しい環境で、アメリカやヨーロッパといったレベルの高いところでコーチングをする機会をもらえたら挑戦することも考えたいです。栃木時代、リトアニア代表のHCを務めたアンタナス・シレイカさんと出会い、雷に打たれたというか、ヨーロッパのバスケットボールは面白いと思うきっかけを与えてもらいました。アルバルク東京時代にはモンテネグロ出身のルカ(パヴィチェヴィッチ)コーチから学べたことも多くあり、同じヨーロッパでもいろいろなスタイルがあると感じました。5人全員が連動するスタイルは、ヨーロッパのバスケットボールから気づきをもらった部分です。今後どのようなチャンスがあるのかはわかりませんが、今は自分自身のレベルを上げて、チャンスをもらった時に自分の仕事を果たしたいと思っています。
