PLAYBACK B.LEAGUE|過去最高の盛り上がり…“バスケフィーバー”に沸く【2023-24】

「りそなグループ B.LEAGUE 2025-26 シーズン」、B.LEAGUEは大きな節目となる10シーズン目を迎える。日本のバスケットボール界に新たな歴史を刻んだあの日から、早くも9つのシーズンが過ぎ去った。熱狂のチャンピオンシップ、語り継がれる名勝負、スター選手の誕生、そして地域に根差したクラブが紡いできた数々のドラマ。この連載では、10年目の未来へとつながるBリーグの軌跡を、シーズンごとに紐解いていく。今回はバスケフィーバーを巻き起こした「B.LEAGUE 2023-24シーズン」の激闘を振り返る。
B1レギュラーシーズン:最終節までもつれ込む熾烈な順位争い…コート外でも過去最高の盛り上がり

日本中を熱狂の渦に巻き込んだ「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」を終えて迎えた新たなシーズン。「B.LEAGUE ID」の登録者数、チケット購入枚数はともに激増すると、開幕からチケット完売カードが相次ぎ、多くのクラブが最多入場者数を更新した。また、「B.LEAGUE ALL-STAR GAME WEEKEND 2024 IN OKINAWA」はリーグ史上初の3日間開催。シーズンを通じて日本バスケットボールが盛り上がりを見せ、総入場者数はB.LEAGUE開幕以降過去最⾼となる450万⼈を突破した。
東地区は宇都宮ブレックスとアルバルク東京による2強体制となった。第34節の直接対戦で星を分け合うと、翌第35節のGAME1でA東京がオーバータイムの末、群馬クレインサンダーズに敗戦。一方の宇都宮は3位の千葉ジェッツを相手に連勝を果たし、2020-21シーズン以来となる3度目の地区優勝を飾った。
中地区は大野篤史ヘッドコーチ体制2シーズン目の三遠ネオフェニックスが首位を独走し、9試合を残して初の中地区優勝を達成した。2位争いは混戦を極め、最終節を前にシーホース三河、サンロッカーズ渋谷、川崎ブレイブサンダースによる三つ巴の争い。首位の三遠に連勝した三河が2位の座をキープし、「日本生命 B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2023-24」出場を決めた。
西地区は名古屋ダイヤモンドドルフィンズと琉球ゴールデンキングスが41勝19敗(勝率0.683)と同成績でフィニッシュした。5月4日、5日に広島ドラゴンフライズ戦が組まれた琉球に対し、名古屋Dは5日、6日に2連戦。琉球が1勝1敗で一足先に最終節を終えると、名古屋Dが佐賀バルーナーズに2連勝した。直接対決で4勝0敗と上回った名古屋Dが琉球の西地区7連覇を阻んだ。
最終節では中地区2位の座を争ったチームに加え、広島ドラゴンフライズ、千葉ジェッツ、島根スサノオマジックを含めた6チームがワイルドカード争いを繰り広げた。3月に入って15勝6敗と驚異的な追い上げを見せた広島がワイルドカード上位を獲得。終盤戦15試合で6勝9敗と黒星が先行した千葉JはSR渋谷に勝率で並ばれたものの、直接対決の得失点差によって最後の一枠を手に入れ、7大会連続7回目のチャンピオンシップ出場を決めた。
チャンピオンシップ:新たな王者が誕生…広島がクラブ創設10シーズン目に快挙

レギュラーシーズン終盤の勢いままに、広島が三遠、名古屋D、琉球を下す“下剋上優勝”。宇都宮(栃木)、A東京、千葉J、琉球に続き、リーグ史上5チーム目の年間優勝に輝いた。
広島の戦いぶりを振り返ると、クォーターファイナルで中地区王者の三遠と激突。爆発的なオフェンス力を誇る相手に対し、GAME1を70得点、GAME2を66得点に抑え、連勝を飾った。同じ西地区を制した名古屋Dとのセミファイナルも敵地での戦い。GAME3にもつれ込んだ激闘を制し、初めてファイナルの舞台に進出した。
ファイナルの相手は連覇を目指す琉球。GAME1に敗れて後がなくなったものの、GAME2を72-63でものにした。中1日で行われたGAME3では琉球をわずか50得点に抑え込む堅守を発揮。一度もリードを許すことなく15点差で快勝し、クラブ創設10シーズン目という節目に快挙を成し遂げた。シューターとして優勝に貢献した山崎稜が「日本生命チャンピオンシップ最優秀選手賞(MVP)」を受賞。シーズン終盤に負傷で戦線離脱を強いられた寺嶋良の代役として司令塔を務め、3試合で30得点をマークした中村拓人が「日本生命ファイナル賞」に輝いた。

昇降格:越谷が“最強”A千葉を撃破…滋賀は1年でB1復帰達成

「日本生命 B2 PLAYOFFS 2023-24」では越谷アルファーズがアップセットを成し遂げた。B1昇格がかかったセミファイナルの相手は、当時のB.LEAGUE最高勝率を更新する56勝4敗(勝率0.933)と圧倒的な強さを見せたアルティーリ千葉。オーバータイムにもつれ込んだGAME1を制すると、GAME2を3点差で競り勝ち、B1初昇格を決めた。滋賀レイクスvs山形ワイヴァンズによるセミファイナルは滋賀が連勝。滋賀はクォーターファイナルGAME1で青森ワッツに敗れるスタートとなったが、その後はファイナルまで連勝を続け、B2優勝とB1復帰を完遂した。
B.LEAGUE初年度から8シーズンにわたってB1に所属した富山グラウジーズが全体最下位の4勝56敗でB2降格。2024年1月7日を最後に白星がなく、B1最多連敗「32」でシーズンを終えた。もう1チームの降格は信州ブレイブウォリアーズ。最終節まで茨城ロボッツと残留を争っていたものの、GAME1の結果によってB2降格が決まった。
B2はレギュラーシーズンの結果、岩手ビッグブルズと新潟アルビレックスBBがB3へ自動降格。B.LEAGUE誕生以前からトップリーグを支え、かつてB1中地区を制した新潟はB1経験があるチームとして初のB3降格となった。B3からは参入1年目の福井ブローウィンズがB2昇格。鹿児島レブナイズが7年ぶりのB2復帰を果たした。

個人賞:D.J・ニュービルが初のMVP受賞…富樫勇樹は唯一の8年連続ベストファイブ

このシーズンからレギュラーシーズンベスト5のノミネート選手10名が事前に明らかにされ、比江島慎、D.J・ニュービル、富樫勇樹、ジョン・ムーニー、テーブス海、セバスチャン・サイズ、河村勇輝、コティ・クラーク、齋藤拓実、ペリン・ビュフォードと、リーグを代表する選手たちが名を連ねた。
全60試合の出場で1試合平均16.3得点4.9リバウンド4.7アシスト1.3スティールと、攻守両面で高いパフォーマンスを披露した宇都宮のニュービルが初のMVP受賞。比江島が6年ぶり3回目、富樫が8年連続8回目、ビュフォードと河村が2年連続2回目となるベストファイブに選出された。

新人賞を受賞したのは金近廉。197センチ98キロのシューターは2023年4月に東海大学を中退し、千葉Jの練習生としてキャリアをスタートさせた。2023-24シーズンから本格的にプロ選手として歩み始めると、7試合の先発を含む57試合の出場で1試合平均6.2得点の活躍。「この賞を獲りたいと思っていました」と明かし、河村のあとに続くことになった。
B1スタッツリーダーはビュフォードが得点王、河村がアシスト王、平尾充庸がベストFT成功率賞と、いずれも2年連続でランキングトップに。最終節で規定試合数に到達したジョン・ムーニーがヴォーディミル・ゲルンを上回り、逆転でリバウンド王の称号を手にした。高い身体能力を誇るコー・フリッピンがスティール王、ゴール下に君臨したジョシュ・ホーキンソンがブロック王。そして、キャリアを重ねるごとに円熟味を増す比江島慎がベスト3P成功率賞に初めて輝いた。
文=酒井伸
構成=バスケットボールキング