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B.MAGAZINE

月刊バスケットボールで1番読まれたニュースは…”記事"で振り返るB.LEAGUE10周年【2016年12月号】

2025.10.20

見どころ・レポート

 

B.LEAGUEのスタートから現在までを『月刊バスケットボール』では取り上げてきたが、最も反響があったもの。それが2016年9月22日、B.LEAGUEファーストシーズンの開幕戦、そして他クラブの立ち上がりだった。今回は2016年12 月号に掲載された記事を再掲する。
※在籍クラブ、肩書などは当時のものです

PLAY BACK-01 Bリーグがついに誕生!

 

振り返れば、実業団チーム中心のJBL(後にNBL)に対抗する形で、プロ選手で構成されるbjリーグが始まったのが、今から11年前の2005年。その時から、日本男子バスケットは“2つのトップリーグ”が存在し、将来、プロの選手を目指す若い選手たちの目指す道も2つに分かれてしまった。そして、様々な人の尽力によって原点に立ち返り、2016年9月22日、ついに両リーグが一つとなり、Bリーグとして新たな一歩を踏み出した。

そして、その開幕カードとして用意されたのが、昨シーズンのNBLレギュラーシーズン1位のアルバルク東京と、bjリーグ最後のチャンピオン・琉球ゴールデンキングスとの一戦だ。新時代の幕開けにふさわしい試合となり、今後この2016年9月22日は、これからの日本男子バスケット界のスタート地点として、後世に語り継がれる日になるのだろう。

 

―開会宣言―

「バスケットボールで日本を元気にしたい」。その思いを胸に、大きな夢と高い志を持って、Bリーグは未来に挑戦していきます。「BREAK THE BORDER」。2016年9月22日、Bリーグの開幕を宣言します。
 

一生の思い出になる開幕チケット

 

今回の開幕戦は、チケットも通常の紙タイプのものではなくプレミアムなものだった。購入者には9月8日頃に手元に届くようになっていたのだが、送られてきた封筒を開けると中に入っているのは9月8日から始まり、9月22日&23日で終わる日めくりカレンダー。1枚ずつめくると毎日違った絵柄で開幕までをカウントダウンできるようになっており、22、23日のページには、クレジットカード風(しかもブラックカード)の入場チケットが添付されているという、にくい演出。さらにそのカードを見ると、NAMEのところに自分の名前が刻印され、さらに試合開始時間、座席番号なども記されているという凝りよう。一生の記念となる開幕チケットだ。

LEDコートは1,000万以上!

 

開幕戦で使用されたLEDコートは、約50cm四方のLEDが張り巡らされたパネルを組み合わせてバスケットボールコートの大きさにしたもの。表面はポリカーボネイトという素材で、耐久性があり、かつ滑りにくいものが使用されている。

ちなみに、このLEDコートを作るのにかかった費用は1,000万円以上(機材はレンタル)。こうしたLEDコートは、2014年にナイキがコービ・ブライアント(元レイカーズ)を中国に招待して行った若手選手を選抜する「Nike Rise」キャンペーンでも使われていたが(モーションセンサーと連動されていた)、そのときは1億円以上かかったそうで、それに比べればリーズナブルと言えるだろう。

このほか、当日は、席にあらかじめ白と赤のTシャツが置かれ、観客全員に手首に装着するためのリストバンド型LEDライトが配布された。これは無線制御されたFreFlow(フリフラ)というもので、これによりエリアごとに色が変わったり点滅したりという演出が可能となったのだ。

また今シーズンから“質の高い試合を魅せること”を目的に、B1にビデオ判定機材Hawk-Eye社SMART Replayが用いられている。これはラグビーのワールドカップなどでも使用されたもので、バスケットで採用されるのは世界初。9月22日の開幕戦ではこのシステムを使って判定されることはなかったが、9月24日の三遠×川崎では、川崎が試合終了間際に放ったシュートが時間内だったかどうかが判定され、“ボールが手から離れたのは時計が0秒になってから”ということで同点に追い付けなかった(72-70で三遠の勝利)。

 

Starting game
記念すべきオープニング2連戦はアルバルク東京が連勝!

 

大河正明チェアマンの開幕宣言に続く、PKCZ®️、そしてShuuKanRenのパフォーマンスで始まったBリーグ開幕戦。開幕の緊張から硬い立ち上がりとなったA東京と琉球の両チームだったが、それでも序盤は、#2 ギャレット、#24 田中、#33 ギレンウォーターと点取り屋が得点を重ねたA東京が主導権を握る。だが、地元沖縄からの遠征組を含め3000人近いファンに後押しされた琉球は、その声援を背に#31 喜多川や#5 マクヘンリーの得点、そして体を張ったディフェンスで反撃に出ると、一時は15点あったビハインドを4点差まで詰める健闘を見せる。しかし最後はミスが続き、結果的に75-80とA東京に押し切られたが、「粘り強くプレイができたので、今までやってきたことに間違いはなかったと確信しました」と胸を張る琉球#14 岸本。bjリーグで4度王者に輝いた意地を見せたと言っていいだろう。

そして、翌9月23日に行われた第2戦。何とか一矢報いたい琉球だったが、この日もリズムをつかんだのはA東京。前半だけで6本の3Pシュートを沈め32-17で折り返すと、その後も元NBA選手のギャレットが観客を魅了するプレイを連発。琉球はマクヘンリーが気を吐くも、この日は差を詰められず74-53でA東京が勝利。歴史的開幕戦を2連勝し、絶好のスタートを切った。

 
 

思いを込めたA東京・正中の開幕宣言

 

開幕戦で両チームのキャプテンが挨拶したが、A東京#7 正中は「歴史的な場に立てることへの感謝の気持ち。そして自分や選手それぞれが感じている思いを、代表してお伝えしました」という思いで宣言した。また33歳となり、ベテランの域にも足を踏み入れてきた。だからこそ、「今後は誰かに用意された舞台ではなく、選手たちが主導になってこの舞台を作り出す。若い選手に対してのメッセージも込めました」と、バスケットの未来を考えたすばらしい挨拶だった。

―挨拶全文―

 

本日は皆様とともに、このようなすばらしい舞台に立つことができ、本当にうれしく思います。誰もがうらやむ、本当に最高の舞台でした。しかしながら、もう今日を追い掛けることはありません。これからは今日のこの盛り上がりを、情熱を、それぞれの思いを、これからのリーグの発展に向けて、しっかりと選手一人一人が努めていかなければならないと思っています。

今日のこのすばらしい開幕戦に勝ったチームとして、またその一員として、これからのリーグの発展に向けて、選手としてとにかく愚直に競技力の向上に励み、プロスポーツ選手として自らの資質の向上を努めることによって、皆様から愛される、そして皆様から応援していただくにふさわしい選手、チームとなっていくことを、今日ここで選手を代表して宣言いたします。

 

開幕戦を戦った選手たちの”声”

  • 田中大貴
    A東京#24/192cm/SG
    試合前から多くのメディアに取り上げられ、開幕戦で最も注目されていた選手。その期待どおり、高確率の3Pシュートやドライブを次々と成功させ、リーグの新たな”顔”として申し分ない活躍を見せた。

    「注目されていたビッグゲームなので、『すごく責任のある試合だ』と思って臨みました。結果的に勝つことができて良かったのですが、あくまで60試合のうちの1試合。どんどん良くなって優勝したいです」

  • 竹内譲次
    A東京#15/207cm/PF/C
    移籍後初の試合のプレッシャーからか、思うような活躍ができなかった竹内。それでも2試合で22本のリバウンドを奪うなどディフェンスで存在感を発揮した。得点に固執しない新たな役割を模索中。

    「こんなにお客さんがいる中での試合は初めてで、緊張しました。赤いTシャツを着たA東京のファンも多かったですが、視覚的にああいった状況は初めてでホームのようなアウェイのような感覚でした」

  • 松井啓十郎
    A東京#16/188cm/SG
    得意の3Pシュートは2日間で1本だったものの、それは初戦の3Qで琉球を引き離す時間帯に生まれた1本。またこのQは6分の出場で7得点を挙げ、チームの勝利に貢献した。

    「今まででしたら、シーズンを通して良くなればいいと思っていましたが、今回はこの開幕戦にピークをもってくるようにしました。今後はメディアへの対応など、今までにない環境にチームとして、もっと慣れていければと感じました。」

  • 岸本隆一
    琉球#14/176cm/PG/SG
    エースとしてチーム、ファンの期待を一身に受けた岸本だったが、A東京の厳しいディフェンスに苦しみ、2試合の合計は11得点。ただ最後までシュートを放ち続け、キャプテンとしての気持ちの強さが感じられた。

    「すごく悔しい気持ちでいっぱいです。でも、この試合を戦えたということは一生の思い出になります。そして、これがベストではなく、これからもっと魅力的なプレイが出せるキッカケにしたいです」

  • 喜多川修平
    琉球#31/185cm/SF
    初戦は全選手に硬さが見られた中、序盤から積極的な攻撃を見せ、両チーム最多の16得点を獲得。以前からシュート力の高さには定評があったが、チームが勢い付く勝負強いシュートを何度も沈めた。

    「多くのファンの前でプレイできたことは本当に幸せでした。このコートに立ちたくても立てないチームがいる中で、琉球とA東京だけが選ばれてここに立つことができ、すごくプラスの経験になりました」

  • アンソニー・マクヘンリー
    琉球#5/202cm/SF/PF
    ボール運びから得点、リバウンドとこの2連戦も幅広い活躍を見せた。中でも初戦の4Qで見せた速攻時のプットバックは、開幕節の一番のプレイと言っていいほどのインパクトがあった。

    「試合はすごく楽しかった。でも結果が付いてこなくて悔しいですね。いつもはしないようなミスはありましたが、徐々に落ち着き、開幕戦でしたがプレイに関してはそこまで問題はなかったと思います」

PLAY BACK-02
まさかの敗戦、そして接戦、若手の活躍…各チームの思惑が交錯した序盤戦

 
 

僅差の試合が続いた開幕節

 

歴史的開幕戦にふさわしい熱戦でついに始動したBリーグは、その後も白熱した試合が続いた。

そのうち、昨年のNBL王者・川崎と三遠の対戦は肉迫した展開となり、終盤に三遠が#73田渡のシュートで逆転に成功。その後の攻撃で、川崎#12スパングラーがブザーギリギリでシュートを放ったかに思われたが、今シーズンから導入されたビデオ判定の結果、得点は無効に。なお三遠は翌日も勝利すると、翌週の富山、横浜も退けて5連勝という好スタートを切った。ほかにも滋賀との初戦で12点差を逆転した三河など、開幕節18戦のうち半数となる9試合が10点差以内のゲームと、白熱した試合が目白押しとなった。

また、A東京から#4ギブス、広島から#10竹内が加入し、優勝候補と目されていた栃木は、開幕戦で秋田に68-83と大差で敗戦。「ターンオーバーが多く、自分たちのバスケットができなかった」とウィスマンヘッドコーチが頭を抱えたようにオフェンスがかみ合わず、その負の連鎖でディフェンスも崩壊してしまった。ただ、以降はオフェンスを立て直し、#0田臥を中心に息の合ったプレイが見られるように。移籍選手も本来の力を発揮し東地区の首位に立っている。

そんな実力伯仲の中、首位は東地区が栃木、中地区は三遠、西地区は名古屋Dが走っている(10月16日現在)。またA東京やSR渋谷が好調で、開幕2連敗スタートの川崎も復調。そのほか旧リーグで上位だった三河や琉球もまずまずのスタートを切っている。

それでも、まだ開幕直後ということもあって各チームの完成度は低く、勢力図がはっきりとは見えていない状態。現時点で上位のチームがそのまま走るのか、はたまたスタートに失敗したチームの逆襲はあるのか? 各チームの様々な思惑が交錯する中、1か月後にはそれぞれの立ち位置が見えてくるだろう。

見逃せない若手の活躍

 

各地の会場で満員が続いた開幕節。そんなファンの期待に応えようと若手選手が奮闘している。まずは新シーズンが始まるにあたり、一気に若返った名古屋D。#12 中東、#21 笹山と2年目の選手に加え、#6 船生、#8 張本ら移籍組も奮闘。新しいチームカラーの〝レッド〟のごとく、若さと活力あふれる試合を展開している。#0 石崎、#13 バチンスキーもケガから復帰し、この勢いは今後も続きそうだ。

このほか、栃木を撃破した開幕戦の殊勲者・#3 安藤(秋田)や北海道#12 西川、千葉#2 富樫など、25歳以下の選手がチームの中心として活躍している。また、Bリーグとしては最初のルーキーとなるSR渋谷#9 ベンドラメ、京都#1 小島も存在感を放っている。ベンドラメは元来のアグレッシブさがテーブスヘッドコーチの考えとマッチし、控え出場ながら流れを変える役割を任され、小島もスキルの高さと積極性を見いだされ開幕からスタメン出場。ともにチームに欠かせない存在になっている。

こうした若い選手の魅力は、スピードと思い切りの良さだ。ベテラン選手に比べ経験やバスケットIQなど未熟な部分は多いが、それでもミスを恐れず清々しさを感じさせる彼らのプレイは初観戦のファンにも分かりやすく、感情移入がしやすい傾向がある。これからのBリーグ発展のカギを握ることになるであろう若手選手が今後、どんな活躍をみせてくれるのかに注目だ。

PLAY BACK-03
主役たちの開幕戦
チーム&リーグの顔として活躍が期待される選手の開幕戦を追う

 
 

田中大貴 A東京 #24  191cm  SG
夏の悔しさを力に変え芽生えたリーグトップ選手への渇望

今夏、リオデジャネイロ・オリンピック世界最終予選を戦った日本代表。そこに大学3年時から名を連ねていた田中の姿はなかった。「悔しいというよりも情けないという気持ちが強かったです」と田中。様々な思いが募り、今でも当時の日本代表の話になると口が重くなってしまう。だが、〝その日〟以来、田中は変わった。「自分で下げた価値は自分で取り戻す」と、穏やかながらも力強い言葉を口にしたのだ。

元来、田中はいわゆる背中で引っ張るタイプの選手。口数は多くなく、試合中に感情を出すことも少ない。またコートでは、高い身体能力を生かした多彩で華麗かつ豪快なプレイを見せるものの、決して自身のプレイに満足することはない。大学の時から、「今は通用しているけど、上のレベルになれば通用しない」と、自身のプレイを冷静かつ的確に分析する力も秀でていた。

だが日本代表に関しては、「選ばれるだろうと思っていました」と言う。心のどこかに安心感があったのだろう。だからこそ、この落選を「いいきっかけ」と捉え、自分自身をもう一度見つめ直した。「慢心がありましたし、欲も出していませんでした」と田中。そして導き出した答えが、「強いインパクトを残すこと」だった。

それを現実のものにするために、夏にはアメリカに渡り、現地でしか経験できないワークアウトをこなした。加えて、プレイスタイルが似ている#ギャレットがチームに加入してきたことも大きな刺激になっている。そうして迎えた開幕戦、田中は一見、普段どおり淡々とプレイしていたように見えたが、シュートフォームの細やかな修正でアウトサイドシュートの確立が向上していた。加えて、相手の意表を突くパスや強固なディフェンスを見せるなど、慢心は一切なかった。また「得点にこだわりたい」と積極的な攻撃姿勢を見せ、注目度の高い開幕2戦で〝今までとは違う田中大貴〟を披露。それは、日本、そしてBリーグを代表できる存在であることを予感させるものだった。

それでも「シーズンは始まったばかりですし、まだまだ」と満足はしていない。だが、それでこそ田中である。現状に満足せず、己の掲げた目標に到達するまで手を緩めない。ポーカーフェイスに見え隠れする芯の強さこそ、田中の魅力なのだ。そして、自身の目指すべき立ち位置についても「Bリーグのトップ選手でありたい。いや、そうでないといけない」と宣言する。

 

それは、長く険しい道のりかもしれない。個人の記録が求められるだけでなく、チームを勝利に導き、試合を支配する存在感が求められる。しかし田中であれば、証明して見せるだろう。日本代表に必要な選手、そしてリーグトップ選手であることを。

 

田臥勇太 栃木#0 173cm PG
いまだ向上心を絶やさない日本バスケット界の顔

このオフシーズン、リーグの中でも最もメディアに出演してきた田臥。そのたびにコメントを求められてきたが、中でも印象的だったのは「もっとうまくなれる」という言葉だ。日本人として初めてNBAのコートに足を踏み入れた2004年から12年がたち、現在36歳。同年代の選手は次々と引退し、気づけば年下ばかり。ベテランの域に達してきた。

それでも「うまくなりたい」という気持ちを絶やしたことはない。ケガ防止のため、練習前後のケアを長時間しながら、技術やバスケットに対する考えを今なお磨き続けている。また若手と接する中で学べるものは学び、逆に自身の経験や技術を惜しむことなく伝えてきた。

その田臥の開幕節は、昨シーズンのチームメイトで、コート内外で様々なことを教えた#3 安藤が所属する秋田との対戦、次節は田臥に続いて日本人2人目のNBA契約を結んだ千葉#2 富樫とのマッチアップになった。幼少期から田臥の活躍を見てきた彼らにとって憧れの存在だが、当の田臥は2人のプレイをたたえながらも「特別な意識はありません」ときっぱり。ただ「どんなポイントガードに対しても負けたくないんです」と続ける。そうしてどんな相手でもリスペクトし、立ち向かっていくことこそ田臥の魅力なのだ。

このように、田臥は常に上を見続ける選手である。能代工高からブリガムヤング大ハワイ校に渡った時も、NBAに挑戦した時も、田臥を突き動かしてきたのは「うまくなりたい」という向上心だ。その気持ちに年齢は関係ない。そんな田臥が今シーズンも、リーグを盛り上げてくれるはずだ。

 
 

富樫勇樹 千葉#2 167cm PG
海外移籍を模索しながら〝得点力に〟こだわる1年に!

 

高校でアメリカに渡った富樫は、海外志向の強い選手だ。2年前は栃木#2 田臥以来、日本人2人目のNBA契約を結び、昨夏はイタリアのディナモ・サッサリでプレシーズンをプレイ。今シーズンも海外でのプレイを希望していたが、最終的には昨シーズン直前に加入した千葉に残留した。そのため開幕前の会見では「Bリーグで活躍し、海外でプレイできるように成長したい」と、海外挑戦の可能性に含みを持たせるようなコメントを残している。

 

そして、その言葉どおり、開幕から活躍を見せている富樫。昨シーズンは出場時間が短かったが、今シーズンは全試合スタメンとして30分以上の出場。チームスタイルも〝富樫中心〟となり、攻撃の起点となっている。

 

そんな中、際立っているのが得点力だ。日本人ガードはパスを第一に考える傾向が強いが、富樫は「得点が第一オプション。チームが困ったときに点を取らなければ」と得点への執着が強い。事実、ピック&ロールからの3 Pシュートやフローターなど、小さいからこその得点術でコンスタントに10点以上を挙げている。

 

こうして活躍度が分かりやすい、目に見える数字を残すことが、海外挑戦の近道なのかもしれない。しかし、現在のチーム傾向を富樫は「今シーズンはチームプレイヤーが多い。自分が得点することで相手のディフェンスが警戒し、そこからパスに切り替えることができます」と分析している。チームを勝利に導くこと優先した上で、自分の強みである〝得点力〟を生かすことにたどり着いたのだ。

もっとも、開幕前の会見では海外への思いを口にした後、「千葉の優勝に貢献したい」とも語っている。そんな富樫は、ガードの得点=チームの勝利に結び付けることができる稀有の存在だ。チームの優勝と自身のステップアップを実現させる1年にするため、今シーズンは得点力を追求していく姿勢を前面に押し出す。

 

岸本隆一 琉球#14 176cm PG/SG
超えられなかった高い壁何度でも立ち上がる生粋の挑戦者!!

開幕戦は徹底マークに苦しみ、独特の雰囲気にものまれてふがいない出来に終わった岸本。試合後、「自分の中で〝できる〟と過信していました。実力不足を痛感した」と、唇をかんだ。

 

その〝できる〟という思いに、根拠がなかったわけではない。実は2年前、プレシーズンゲームでトヨタ東京(現アルバルク東京)に敗れ、当時の岸本は「優勝して新人王もプレイオフもMVPも獲って、上が見えなくなっていた中、こういう悔しい思いができて良かったです」と、屈辱を心に刻み込んでいた。そして今年、「この2年間、自分なりに、いろいろ考えて積み上げてきたものがありました」と岸本。だからこそ、強敵との再戦に〝できる〟という自信があったのだ。

 

それでも、現実は厳しかった。「力の差があったことは認めざるを得ません」。ただ、このまま下を向いているわけではない。「自分にはまだ伸びしろがある。〝チームの心臓〟であるという自覚を持って、もっと強くならなきゃいけないです」と言い切る。

 

その決意に燃えた目は、実に岸本らしかった。プロ入り後は輝かしい道を歩んできたと言っても、もともと中学・高校と全国上位とは無縁。大学でも入学当初は2部で、1部昇格後も立場は常にチャレンジャーだった。相手が強ければ強いほど燃え、勝負が懸かる場面でこそボールを欲しがるのが岸本であり、〝強者への挑戦〟こそが、彼のバスケットボールを作り上げてきたのだ。Bリーグの舞台に足を踏み入れても、岸本は強敵に屈せず何度でも立ち上がり、生き生きと立ち向かうだろう。数々の挑戦の積み重ねこそが、彼をここまで連れてきたのだから。

 

安藤誓哉 秋田#3 181cm PG
今後活躍が期待される注目の選手を紹介!
ハツラツプレイを見せる得点力の高い若きガード!

 

金星を挙げた開幕戦の栃木戦、3Q最後のオフェンスでボールを持った安藤は、ピック&ロールをしようとした外国籍選手を静止させ1対を仕掛けた。その結果はブザービーターでの3Pシュート。「3Qの最後は自分で勝負を仕掛けたかった。結果はバンクシュートでしたが、強気で行って良かったです。」そして、翌週のA東京戦でも同じ状況を作り、ここでもブザービーターを成功させている。

振り返れば、安藤は明成高時代からそのシュート力の高さと積極性がウリだった。加えて、向上心も強く、「海外でプレイがしたい」と明治大4年の夏に〝早期引退〟し、カナダとフィリピンでプレイ。その時点で、卒業に必要な単位を取っていたという真面目さもある。そんな真っすぐな性格のため、コート上では時に熱くなってしまうこともあるが、バスケットに対しては貪欲な選手なのだ。

そんな安藤は昨シーズン、フィリピンから帰国後、栃木に途中加入したが#0 田臥、#13 渡邉のガードの壁は崩せず、出場時間は短かった。貪欲な安藤にとって〝コートでの思いを表現できない〟ことはもどかしかったのだろう、今シーズンは出場機会を求めて秋田に移籍した。そして、その秋田では長谷川ヘッドコーチの「自由にやらせる」という方針の下、本来のウリである積極的なプレイでチームをけん引。移籍後、まだそれほど時間がたっていないが、すでにチームに欠かせない選手となり、毎試合30分以上の出場を果たしている。

そして「ガードとしてチームをまとめなければいけませんが、積極性を出していきたいです」と強気のプレイスタイルで、開幕戦では古巣・栃木を相手に勝利。「開幕戦の勝利はチームとしても、自分としても自信になりました」と安藤。自身のスタイルを確立しているからこそ、今後さらに〝経験〟と〝自信〟を積み重ねていけば、Bリーグを代表するガードに成長していくだろう。

文=月間バスケットボール

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