島田慎二は2050年の日本をどう描く?B.LEAGUEが目指す「感動立国」とは
熱狂のその先へ。なぜ「感動立国」なのか
B.LEAGUEは2016年の開幕から約10年が経過しました。おかげさまでB1からB3まで合わせると、年間入場者数は500万人を突破し、事業規模は開幕当初の約3.8倍へと成長を遂げることができました。
しかし、私たちの挑戦はここで終わりではありません。私たちの2050年に向けたビジョン「感動立国」。これを実現するためには、まだやるべきことが山積みです。
「感動立国」とは、2050年という約25年先の未来を見据えた、私たちの中長期的なゴールです。今、日本社会は地政学的リスクや気候変動、少子高齢化など多くの課題に直面し、子どもたちが明るい未来を描きにくい状況にあります。
そんな閉塞感のある時代だからこそ、スポーツが持つ「熱狂」や「感動」のエネルギーが必要だと、私たちは信じています。バスケットボールを通じて、アリーナから街へ、そして日本全国へと熱量を広げていく。それによって、人々が前向きになり、子どもたちが希望を持てる社会を創る。それが、私たちが目指す「感動立国」の姿です。
よく「なぜスポーツリーグが『感動立国』などという壮大なビジョンを掲げるのか?」と問われます。確かに、スポーツ界は、社会とは離れた存在に見られがちです。しかし、スポーツ界もまた、社会の一部なのです。社会が良くならなければ、その一部であるスポーツ界だけが良くなるということはあり得ません。
スポーツは、地域創生や社会課題の解決に大きく寄与できるポテンシャルを秘めています。しかし、これまでのスポーツ界は事業基盤が弱く、その担い手になりきれていませんでした。
だからこそ私たちは、事業として自立し、地域や社会に関わる人々を幸せにする「社会のインフラ」にならなければならない。そうなることで初めて、バスケットボールを通じて「感動立国」が実現できると信じているのです。
「勝敗」ではなく「事業」を評価する「B.革新」
「感動立国」という未来を手繰り寄せるために、私たちは今、リーグの構造そのものを作り変える「B.革新」という改革に取り組んでいます。
これまでのB.LEAGUEは、Jリーグを参考に、競技成績による昇降格制度を採用してきました。これはリーグの黎明期には競争を生み出し、成長を牽引するエンジンとなりました。しかし、「勝てば官軍、負ければ賊軍」という勝利至上主義は、ときにクラブ経営に無理を強いることになります。過度な選手への投資による経営の疲弊や、勝敗に一喜一憂することで長期的な投資が後回しになることもありました。
そこで今回の改革では、競技成績による昇降格制度を廃止し、代わりに「事業力」で所属するディビジョンが決まる仕組みを導入します。これからは、試合に勝ったから上のディビジョンに行けるのではありません。売上高12億円、平均入場者数4,000人、そして基準を満たしたアリーナの確保──。こうした基準をクリアし、その地域でしっかりと愛され、ビジネスとして自立しているクラブこそがトップディビジョンであるB.LEAGUE PREMIERに所属できるのです。「勝てばいい」ではなく、「地域にどれだけ必要とされているか」を評価軸にする。これは世界でも類を見ない挑戦的なアプローチです。
さらに、ドラフト制度やサラリーキャップ(選手年俸の上限設定)を導入することで、戦力の均衡化を図ります。資金力のある限られたクラブだけが強く、そうでないクラブは勝てない。これでは、地域創生になりません。どの地域のクラブにも優勝のチャンスがあり、「今年はダメだったけれど、来シーズンは自分たちの街が頂点に立つかもしれない」という希望を持てるリーグにする。それが、日本全体を盛り上げるためには不可欠なのです。
アリーナは、この改革の象徴です。従来の体育館での観戦から、エンターテインメント性に富んだアリーナでの観戦へ。暗転演出や音響、光の演出を駆使し、非日常の空間を作り出す。これにより観戦体験の質は劇的に向上します。しかし、アリーナの価値はそれだけではありません。バスケットボールの試合がない日には、音楽コンサートや他のイベントが行われ、地域の賑わいの核となります。そして万が一の災害時には、防災拠点としての機能も果たす。ビジネスの成長エンジンであり、地域の社会インフラでもある。それが私たちの目指す「夢のアリーナ」なのです。
「点」から「面」へ。B.LEAGUE流まちづくり
B.LEAGUEは「地域創生リーグ」を標榜しています。全国各地にクラブが存在するB.LEAGUEにとって、地域の存続はクラブの存続と同義です。地域から人が減り、経済が縮小すれば、クラブも立ち行かなくなる。その危機感は常に持っています。
だからこそ、私たちは「バスケの試合」という「点」の活動から、365日を通じた「面」の活動へと進化しなければなりません。それがB.LEAGUE流の「まちづくり」です。
具体的な事例をご紹介しましょう。秋田ノーザンハピネッツは、常設の「こども食堂」を運営しています。パートナー企業の協力を得て、経済的な困難を抱える家庭だけでなく、地域の子どもたちが集える場所を提供しています。これは、課題先進県と言われる秋田において、クラブが地域のハブとなって社会課題に向き合っている好例です。
また、茨城ロボッツや佐賀バルーナーズでは、アリーナ周辺を巻き込んだ「ウォーカブル」なまちづくりを推進しています。アリーナを核にして人の流れを作り、中心市街地の活性化に貢献する。試合の日という「非日常」の熱狂を、街の「日常」へと染み渡らせていく取り組みです。
こうした活動は、確実に数字としての価値も生み出しています。 例えば、沖縄の琉球ゴールデンキングスの事例では、経済波及効果が約127億円に上ると試算されています。県外からの観戦者も多く、観光産業への貢献も大きい。さらに重要なのは「社会的価値」です。観戦者の多くが「地域への愛着」を感じ、「健康意識」が高まったと回答しています。スポーツがあることで、街が豊かになり、住民の幸福度が上がる。琉球ゴールデンキングスの社会的価値を金額に換算すると182億円になります。これこそが、私たちが地域にもたらしたい価値なのです。
現在、B.LEAGUEのクラブがない都道府県はあと6県となりました。47都道府県すべてにクラブを誕生させ、日本中どこに住んでいてもB.LEAGUEの熱狂に触れられる状態をつくる。それもまた、私たちが目指す「感動立国」への重要なステップです。
理念を共有できる企業パートナーと目指す「感動立国」
「感動立国」の主役は誰か。それは、今を生きる子どもたちです。 2050年、彼らが社会の中心となった時に、日本が希望あふれる国であってほしい。そのために、B.LEAGUEは「B.LEAGUE Hope(B.Hope)」という活動を通じて、子どもたちの未来への投資を行っています。
活動の柱は「People(人類)」「Peace(平和)」「Planet(地球)」の3つです。 例えば、不登校の子どもたちへの支援や、ソフトバンク様と共創している、離島など指導者が不足している地域へのリモートコーチング。これらは、バスケットボールというツールを使って、子どもたちに「居場所」や「成長の機会」を提供するものです。
また、「防災バスケ」というユニークな取り組みも行っています。楽しみながら防災知識を身につけることで、いつ起こるかわからない災害から子どもたちの命を守る。これもまた、地域社会に責任を持つリーグとしての役割だと考えています。
こうした社会課題の解決は、リーグやクラブ単独では成し得ません。そこで重要になるのが、企業の皆様とのパートナーシップです。これまでにご紹介したさまざまな取り組みは、リーグ、クラブのスポンサー10,000社以上の企業の皆様のご協力によって実現しています。
私たちが目指しているのは、単に看板を出して広告枠を買っていただくような従来型のスポンサーシップではありません。 一言で言えば「理念共有型」のパートナーシップです。「感動立国」「地域創生」「子どもたちの未来」といった私たちの理念に共感いただき、「パートナーとして一緒に何ができるか」を膝を突き合わせて考える。りそなグループ様と実施しているフードドライブや、インフロニア・ホールディングス様と取り組んでいるクラブと市民が一体となってインフラ情報等を投稿し地域を盛り上げる参加型ゲームは、まさにその象徴です。企業の皆様が持つリソースや技術と、B.LEAGUEが持つ発信力や地域とのつながりを掛け合わせることで、社会課題を解決し、共に新たな価値を創造していく。そんな仲間を、私たちは求めています。
B.LEAGUEをきっかけに、世界が日本の魅力を知る
国内での基盤を固める一方で、私たちは視線を世界、特にアジアにも向けています。日本の人口減少は避けられない現実です。縮小する国内市場だけを見ていては、リーグの成長も頭打ちになります。だからこそ、海外の活力を取り込むグローバル戦略が不可欠なのです。
現在、B.LEAGUEは「NBAに次ぐ世界第2位のリーグ」を目指し、着実にその地位を築きつつあります。競技面では、アジア枠などを活用し、各国の代表クラスの選手が27カ国から集まっています。河村勇輝選手のように、B.LEAGUEからNBAへ挑戦する選手も出てきました。世界レベルの選手が日常的にプレーすることで、リーグ全体のレベルも飛躍的に向上しています。
ビジネス面でも、アジアを中心とした展開を加速させています。昨シーズンは27の国と地域、今シーズンはさらに対象エリアを拡大して放送・配信されています。フィリピンやインドネシアなど、バスケットボール熱の高い国々でB.LEAGUEのファンを増やし、彼らをインバウンド観光客として日本のアリーナへ呼び込む。B.LEAGUEというコンテンツをきっかけに、日本のさまざまな地域の魅力を知ってもらう。これは、観光立国を目指す日本にとっても大きな武器になるはずです。
B.LEAGUEが目指す、2050年の景色
最後に、私が思い描く25年後、2050年の未来についてお話します。 今、アリーナで目を輝かせている子どもたちが大人になったとき、B.LEAGUEが野球やサッカーと並ぶ、あるいはそれ以上の存在になっている。現在、スポーツ人口の中でバスケットのシェアは10%以下です。しかし、25年後には30%~40%にできるはずだと考えています。
そして何より、日常の中に当たり前のようにB.LEAGUEがあり、週末になればアリーナに家族や友人と集まる。そこには熱狂があり、感動があり、地域の誇りがある。
「日本に生まれてよかった」「この街に住んでいてよかった」と思える社会の一部に、B.LEAGUEの熱狂や感動が貢献していれば、これほど嬉しいことはありません。
「感動立国」は、B.LEAGUEだけで実現できることではありません。企業の皆様、自治体の皆様、そしてファンの皆様。多くの仲間と手を携え、共創していくことで初めて成し遂げられます。 ぜひ、私たちと共に、感動あふれる未来をつくっていきましょう。
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