『スタッツで見るBリーグ』敗戦時のスタッツから見えるCS出場一番乗り組の傾向

りそなグループ B.LEAGUE 2024-25シーズンも執筆時点では33節を消化。本来であればCS出場8枠を巡って終盤戦の混戦が続くはずだが、今季は様相が異なる。33節終了時点で、すでに4クラブのりそなグループ B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2025-26出場が確定している。8枠の半分が、残り試合を待たずに埋まったのだ。
長崎ヴェルカ、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、宇都宮ブレックス、シーホース三河──。一番乗りでCS切符を掴んだこの4クラブは、シーズンを通して安定した強さを発揮してきた。とはいえ、どんな強豪にも勝ちきれなかった試合は存在する。勝率の高いクラブほど、その数少ない取りこぼしの試合に、クラブの傾向が色濃く表れるものだ。
今回は一番乗り組の4クラブについて、敗戦試合の平均スタッツとシーズン平均の差分を取ることで、各クラブの**「数字の揺らぎ」**を浮かび上がらせる。安定した数字の奥にある、勝敗を分ける要素を探っていきたい。
残り4枠を争うクラブたちが本番で対峙するのは、ほかならぬこの4クラブである。先に決まった4クラブの傾向を読み解くことは、CS全体の見通しを立てるうえでの第一歩でもある。4クラブそれぞれの「揺らぎ」の正体、そしてそこに共通する傾向はあるのか──数字から探っていこう。
※スタッツは33節終了時点のものを参照
※レーティングについて:オフェンシブレーティングは「100ポゼッション(攻撃回数)あたりの得点」、ディフェンシブレーティングは「100ポゼッションあたりの失点」を表す指標である。バスケットボールでは試合ごとに攻撃回数が異なるため、単純な平均得点・失点では試合のテンポによって数字がブレてしまう。レーティングはそのブレを排除し、純粋にクラブの攻守の「効率」を測る物差しとなる。
分析方法
今回の分析手法はシンプルである。シーズン平均スタッツと敗戦試合平均との差分を取り、その差分が顕著に現れたスタッツを紹介。クラブに対する傾向と対策を考えていく。
東地区:宇都宮ブレックス

リーグで最も3Pシュートを放つ宇都宮ブレックス(3ptA率47.79%でリーグ1位)について分析を始めよう。
・オフェンススタッツ
| 項目 | 平均 | 敗戦平均 |
|---|---|---|
| 3FG% | 37.49% | 29.34% |
| 2ptA% (2Pシュート試投割合) | 41.70% | 44.87% |
| 3ptA% (3Pシュート試投割合) | 47.79% | 44.67% |
| PitP% (ペイントエリア得点割合) | 38.28% | 44.07% |
| ORB% (オフェンスリバウンド獲得率) | 33.83% | 30.67% |
| オフェンシブレーティング | 124.58 | 106.75 |
| AST% (得点に対するアシストの割合) | 57.56% | 54.32% |
・ディフェンススタッツ
| 項目 | 平均 | 敗戦平均 |
|---|---|---|
| Opp3ptFG%(被3FG%) | 30.64% | 37.83% |
| DRB%(ディフェンスリバウンド獲得率) | 70.6% | 65.0% |
| OppSCP%(失点におけるSCPの割合) | 14.26% | 15.97% |
| ディフェンシブレーティング | 108.45 | 123.60 |
宇都宮の傾向と対策!
オフェンスから順に傾向を見ていきたい。まず目を引くのは3Pシュート決定率の大きな低下である。シーズン平均37.49%に対し、敗戦時は29.34%と8ポイント以上も落ち込んでいる。
さらに踏み込むと、リーグ随一の3Pシュートクラブである宇都宮にとって特徴的な変化が見て取れる。3Pシュート試投割合が減少し、その分が2Pシュート試投割合へとそのままスライドしているのだ。これは3Pシュートをハードに守られ、ドライブからペイントエリアへと誘導されているゲームで敗戦していることを示唆する。結果としてアシストは減少し、ペイントエリア内得点の割合が増加する。これが宇都宮の敗戦時に表れる典型的なオフェンスパターンと言える。
ディフェンス側に目を移すと、3Pシュートを多く決められている一方、相手の試投割合に大きな増減はない。これはディフェンスのやり方自体は通常通りだが、打たれたショットを決められてしまっていることを意味する。
それ以外に顕著なのがディフェンスリバウンドの獲得率低下だ。敗戦時には平均から5ポイント以上落ち込み、リーグ下位(25~26位)レベルにまで低下している。
これらを踏まえて対戦相手側の対策を整理すると、まず宇都宮の3Pシュートを打たせないことが起点になる。具体的には試投数を32本以内に抑え、可能な限りアシストのつかないプルアップへと誘導し、決定数を10本以内に抑え込みたい。宇都宮のオフェンスにディフェンスのズレが生まれていない場合は、こちら側のディフェンスリバウンド獲得率も自然と上がるため、相手のオフェンスリバウンド獲得率を下げることにつながる。攻める側としては積極的にオフェンスリバウンドを狙い、13本の獲得から14~15得点を上積みできれば理想的だ。
敗戦傾向を見るかぎり、宇都宮のディフェンスを攻略するよりもオフェンスのリズムを狂わせる方が、対戦相手にとって具体的な対策を立てやすいと言えるのではないだろうか。
西地区:シーホース三河

オフェンシブレーティングがリーグ7位、ディフェンシブレーティングもリーグ19位(リーグ全体で上位8位)と、攻守のバランスに優れた三河を分析していこう。
・オフェンススタッツ
| 項目 | 平均 | 敗戦平均 |
|---|---|---|
| 2FG% | 58.67% | 52.15% |
| PitP% (ペイントエリア得点割合) | 43.20% | 42.25% |
| SCP% (セカンドチャンス得点割合) | 12.6% | 11.8% |
| ORB% (オフェンスリバウンド獲得率) | 29.90% | 25.56% |
| AWAYeFG (アウェイ実質決定率) | 54.06% | 47.19% |
| オフェンシブレーティング | 118.05 | 107.05 |
| アウェイオフェンシブレーティング | 116.79 | 104.33 |
| アシストレーティング | 28.54 | 26.51 |
・ディフェンススタッツ
| 項目 | 平均 | 敗戦平均 |
|---|---|---|
| Opp3ptFG%(被3FG%) | 35.09% | 39.14% |
| AOpp3FG% (アウェイ被3FG%) | 36.18% | 41.09% |
| OppFBP% (速攻失点割合) | 14.28% | 15.75% |
| Opp2pt割合(2pt失点割合) | 47.10% | 43.34% |
| Opp3pt割合 (3pt失点割合) | 38.24% | 40.47% |
| アウェイディフェンシブレーティング | 111.82 | 124.08 |
| ディフェンシブレーティング | 110.25 | 122.03 |
・三河の傾向と対策!
冒頭でお伝えしておきたいのは、三河は敗戦時においてもオフェンシブ/ディフェンシブレーティングのスタッツ変化が比較的小さく、分析が難しいクラブだという点である。それでも、いくつかの傾向は確かに見えてくる。
まずオフェンスから見ていこう。注目したいのは2Pシュート決定率の落ち込みだ。三河はそもそも2Pシュート試投割合がリーグでも低い部類に入るクラブだが、その決定率が敗戦時には58.67%から52.15%へと大きく下がっている。加えて、元々低いオフェンスリバウンド獲得率がさらに下がり、SCP%も下降。そしてアウェイゲームにおいて、実質決定率(eFG%)やオフェンシブレーティングが顕著に下がる傾向が見られる。
続いてディフェンス。三河は元々リーグ5番目に3Pシュートを打たせるクラブだが、敗戦時にはその被決定率が高くなる傾向にある。さらにこちらもアウェイゲームでネガティブな数字が並ぶ。
これらを踏まえて対戦相手側の対策を整理すると、三河の戦術への理解が出発点になる。三河は5人がアウトサイドに広がりペイントエリアを広く使う5outというスペーシング戦略を多用するクラブだ。そこから巧みなオフボールスクリーンプレーで無人のゴール下へ飛び込み、パス一本でイージーな2Pシュートを生み出してくる。まずはこのプレイを防ぐことが重要であり、具体的には平均より2本以上抑えたい。敗戦時にアシストが減少する傾向からも、この攻撃を封じることが三河を崩す鍵であることが裏付けられる。
加えて、三河がディフェンスで相手に打たせてくる3Pシュート(Opp3ptA40.69% リーグ5位)を確実に決めることも対戦相手には求められるだろう。
総じて、三河の傾向はホームで迎え撃つクラブにとって有利に働きやすい。アウェイ三河との対戦になるクラブは、ペイントへの侵入を許さず、オープンな3Pシュートを高確率で沈められるかが分水嶺となる。
西地区:名古屋ダイヤモンドドルフィンズ
何といってもディフェンシブレーティング98.5と、Bリーグの歴史上最も強固なディフェンスを擁する今季の名古屋Dを分析していこう。
・オフェンススタッツ
| 項目 | 平均 | 敗戦平均 |
|---|---|---|
| 2FG% | 49.65% | 45.76% |
| PfT% (得点におけるTOからの得点割合) | 23.39% | 20.42% |
| オフェンシブレーティング | 111.81 | 103.23 |
| TOV% (ターンオーバーの割合) | 16.59% | 18.21% |
| AST% (得点に対するアシストの割合) | 55.61% | 52.25% |
| HomeFT% (ホームにおけるFT%) | 70.27% | 65.8% |
| AwayFT% (アウェイにおけるFT%) | 73.71% | 67.17% |
・ディフェンススタッツ
| 項目 | 平均 | 敗戦平均 |
|---|---|---|
| Opp3ptFG% (被3FG%) | 29.42% | 38.05% |
| OppPitP% (ペイントエリア失点割合) | 46.45% | 41.60% |
| ディフェンシブレーティング | 98.49 | 113.77 |
| アウェイゲーム・ディフェンシブレーティング | 99.06 | 116.73 |
| 相手のシュートで終わった回数 | 72.99 | 76.02 |
| OppASTRtg (相手のアシストレーティング) | 24.99 | 27.87 |
| DRB% (ディフェンスリバウンド獲得率) | 67.87% | 64.82% |
| AOppeFG% (アウェイ被実質決定率) | 48.58% | 56.52% |
| Opp2pt割合 (2ポイント失点割合) | 52.94% | 47.68% |
| OppTOV% (相手からTOを奪った割合) | 21.70% | 19.46% |
・名古屋Dの傾向と対策
オフェンスの傾向としては、2Pシュート決定率の低下が起点になる。元々リーグで8番目に多く2Pシュートを放つクラブだが、その決定率が4%以上下がり、ペイントエリアへのアシストも減少している。加えてターンオーバーによるポゼッションロスとフリースロー決定率の低下(ホーム/アウェイともに)も、オフェンシブレーティング減少を後押ししている。
ディフェンスはより興味深い。名古屋Dはリーグで最も3Pシュートを「決めさせない」クラブだが、敗戦時には打たせた3Pシュートを効率よく決められている。相手のアシストレーティングが増加していることから、キックアウトなどから打たれている可能性が高い。さらにリーグ唯一の泣き所であるディフェンスリバウンド獲得率(リーグ18位)も悪化。セカンドチャンス失点割合の上昇は微増にとどまるが、これは相手の決定率自体が上がりリバウンド機会が減っている結果であり、見た目以上に深刻だ。
対策として何より強調しておきたいのは、名古屋Dのオフェンスを止めることより、リーグ最強のディフェンスを崩すことに重点を置くべきだという点である。敗戦時のレーティング変化の幅を見れば明らかだろう。
具体策は3つに絞られる。第一にホームコートの確保。アウェイゲームのディフェンスとフリースローが崩れる傾向にあり、上位クラブにとっては朗報だ。第二にアシスト付きの3Pシュートを3~4本増やすこと。名古屋Dの強烈なスイッチとローテーションをかいくぐる必要があるが、リーグ平均17%に対しTOV19%・15回以内に抑えれば無理な目標ではない。第三にミスマッチを保ったままのオフェンスリバウンド。獲得率35%を狙いたい。加えて、ピック&ロールから生まれるアシスト付きの2Pシュートを意識して守ることも効果的だろう。
西地区:長崎ヴェルカ
今季リーグ最高勝率を叩き出す最強クラブの長崎を、数少ない敗戦の傾向から分析してみたい。
・オフェンススタッツ
| 項目 | 平均 | 敗戦平均 |
|---|---|---|
| 3FG% | 37.42% | 31.20% |
| FTD% (フリースローポゼッションの割合) | 10.66% | 12.01% |
| AST% (得点に対するアシストの割合) | 57.39% | 50.78% |
| eFG% (実質シュート決定率) | 57.04% | 51.54% |
| オフェンシブレーティング | 118.61 | 108.62 |
・ディフェンススタッツ
| 項目 | 平均 | 敗戦平均 |
|---|---|---|
| Opp2ptFG% (被2FG%) | 50.16% | 56.33% |
| Opp3ptFG% (被3FG%) | 35.53% | 44.43% |
| OppSCP% (被セカンドチャンス得点割合) | 13.78% | 15.25% |
| OppPfT% (被ターンオーバーからの得点割合) | 17.05% | 19.38% |
| Opp2ptA% (相手の2pt試投割合) | 51.27% | 49.08% |
| Opp2pt割合 (2ptによる失点割合) | 46.93% | 43.45% |
| OppeFG% (相手の実質シュート決定率) | 51.24% | 60.44% |
| HOppeFG% (ホーム被実質決定率) | 51.03% | 62.42% |
| DRB% (ディフェンスリバウンド獲得率) | 70.82% | 66.33% |
| ディフェンシブレーティング | 103.65 | 120.09 |
| ホーム・ディフェンシブレーティング | 104.45 | 121.94 |
| OppAST% (被アシスト得点割合) | 52.68% | 48.47% |
・長崎の傾向と対策
オフェンスの傾向から見ていこう。まず注目したいのは、リーグNo.1の決定率を誇る3Pシュート決定率が敗戦時には大きく下がっている点である。アシストの割合も同時に低下していることから、キックアウト3Pシュートの割合が減少していることが読み取れる。一方でフリースローポゼッションが上昇しており、ここから対戦相手の対策としてインサイドへ誘い込むことの重要性が浮かび上がる。
続いて、項目の多いディフェンスを見ていこう。最も明らかなのは3Pシュート/2Pシュート被決定率の上昇である。さらに踏み込むと、相手の2Pシュート試投割合と得点割合がむしろ下がっていることから、敗戦時の長崎は本来より多くの3Pシュートを打たれており、その3Pシュートを高確率で沈められていることがわかる。後述するアシスト失点割合の減少と合わせると、プルアップ3Pシュートを得意とする選手に決められている構図が見えてくる。
加えて、ディフェンスリバウンド獲得率の低下から、相手にオフェンスリバウンドを許しイージーな2Pシュートを決められているケースも多いと推測できる。アシスト失点割合の減少は、セカンドチャンス失点とプルアップ3Pシュートによる失点が増えた結果と整合する。実際、敗戦した三遠・三河・宇都宮・東京・琉球戦では相手エースの3Pシュートが大当たりしており、この分析を裏付けている。ターンオーバーからの失点も増加しており、アシスト不要のイージーな得点を許している点も見過ごせない。
そして興味深いのは、元々強固な長崎のディフェンスが、ホームゲームでこそ崩れやすい傾向がある点だ。
これらを踏まえて、長崎の対策という難題に挑んでみよう。敗戦時のスタッツを見るかぎり、長崎を崩すならディフェンス側を狙いたい。具体策は以下の通りだ。
第一に、リーグで7番目に3Pシュートを「打たせない」長崎の強烈なディナイディフェンスをかいくぐり、3Pシュートを約28本試投することを目標としたい。第二に、好調な選手(プルアップが得意なら尚良し)を見つけてボールを集中させ、12本の決定を狙う。第三に、その選手にスイッチDFで対応された場合は積極的にオフェンスリバウンドを狙い、約19本のオフェンスリバウンドからセカンドチャンス14点を獲得したい。第四に、ターンオーバーから18得点を奪えれば視界は良好となる。
戦術的には、両コーナーに高確率シューターを置き、トップの3人がスクリーンとピックプレーでコーナーヘルプを釣り出してくる長崎のオフェンスに対して、いかにヘルプを出させず2点を我慢できるかがディフェンスの鍵となる。
なおもう一つ興味深い数字がある。長崎は敗戦の3分の1が3点差以内である一方、3点差以内の勝利は1試合しかない。長崎ホームで接戦に持ち込めれば、勝機は確実に見えてくるだろう。
文:しんたろう
