『B.LEAGUE UNITED』を率いたダミアン・コッターの確信「B.LEAGUEは今回のプログラムの成果について喜ぶべきでしょう」

「海外の優れたバスケに触れるのが早ければ早いほど、成長という見返りを得られるのも早くなる」
B.LEAGUEが取り組む選手育成の一環で結成された選抜チーム『B.LEAGUE UNITED』が8月2日からのオーストラリア・メルボルン遠征を終了した。昨年はアメリカ・ラスベガスでNBAサマーリーグ参戦チームとの対戦を実施したが、今回はB.LEAGUEとパートナーシップ関係にもあるオーストラリアのプロリーグNBL(National Basketball League)の2チームと練習試合を行った。
今回、B.LEAGUE UNITEDをヘッドコーチとして率いたのは、昨季までシカゴ・ブルズでアシスタントコーチを担ったオーストラリア人のダミアン・コッター氏だった。男子U19オーストラリア代表を2013年のU19世界選手権で4位に導き、その他、NBAの下部組織Gリーグのコーチ、FIBAとNBAによる世界的育成プロジェクト『Basketball Without Borders』の講師を務め、若手選手の育成においても定評のある人物だ。
将来有望な若手選抜チームのB.LEAGUE UNITEDを率いるにあたり、コッター氏はふさわしい人選だったと言えた。8月2日から10日までと活動期間は短期間ではあったものの、B.LEAGUE UNITEDでの活動は同氏にとっても実りのある体験となったようだ。
「選手たちは前回学んだ教訓を生かして、オーストラリアならではのフィジカルさに順応し本当によくやってくれました。私としても彼らのことをとても誇りに思います」
今年の遠征の締めとなる8月9日のメルボルン・ユナイテッド戦後、コッターヘッドコーチは将来ある若い選手たちの戦いぶりをそう振り返った。
B.LEAGUE UNITEDは遠征初戦で、昨季NBL3位の強豪、サウスイースト・メルボルン・フェニックスと対戦し、相手の大きさと強さの前に良さを出せず、60-113と大差をつけられての敗戦を喫した。そこから3日。B.LEAGUE UNITEDの選手たちの骨のあるプレーぶりを見たコッター氏の声には、感慨が込められていたように聞こえた。
活動期間は実質1週間ほど。しかも選手は異なるチームから集まった選抜のそれ。さらに言えば、サイズの担保のために外国籍選手を数名採用した昨年とは違い、今年は日本人選手だけでロスターを編成した。純然たるビッグマンが皆無で、苦戦は避けられない状況だった。
もっとも、プログラムの主旨は勝ち負けではない。若手選手たちにB.LEAGUEの「外」を見て、様々なことを感じてもらう機会を提供すること。コッターヘッドコーチは「海外の優れたバスケットボールに触れるのが早ければ早いほど、選手たちが成長という見返りを得られるのも早くなります」と言葉に力を込め、B.LEAGUEと日本バスケットボール協会(JBA)が一枚岩となって運営するこの育成プログラムを「とても良いモノ」だとした。
「必ずしも(国やリーグによる)組織的なものである必要はありませんが、選手の成長には何かしら戦術とプログラムを提供してあげることが肝要です。そのためには彼らを支える人たちが同じ方向を向く必要があります。私が日本のバスケットボール界について必定に前向きだと感じることの一つが、B.LEAGUEとJBAが協力体制を築いていることです。世界を見渡してもそのように機能している国は多くありません。まだこのプログラムは始まって間もないものですが、B.LEAGUEは今回のプログラムの成果について喜ぶべきでしょう」
遠征への参加を決めた選手たちは、体躯やプレーのスタイル等の異なる相手との対戦を通じて代えがたい経験を得た。先述の通り若手選手の育成経験も豊富なコッター氏から指導を受けたこともまた、貴重なものとなった。
チーム事情で所属のアルティーリ千葉でとは違い、センターとしてのプレーを求められる場面もあった渡邉伶音は、選手たちに頻繁にフィードバックを授けるなど常にコミュニケーションを取ってくれたとコッターヘッドコーチの指導について言及した。
「練習中に『これはこうだ』とか言うのは他のコーチでもあるんですけど、試合や練習が終わった後、一人ひとりを呼んでフィードバックをしてくれるコーチでした。この活動中も1回や2回じゃなく、毎回の練習、毎回の試合でそうしてくれて『このプレーはダメ、このプレーは良い』と言うだけじゃなく、『(あのプレーには)こういう意図があったんだけど、こういうところはすごく良かったよ』だとか、本当に自分のプレーを見てくれていると感じました。またフィルムを見て『昨日は気づかなかったけど、ここが良かった』というのを次の日に言ってくれもしました。そういうコミュニケーションの取り方は初めての感覚でしたし、自分としても『次はこれをやってみよう』とすぐ行動に移せていました」
コッターヘッドコーチはB.LEAGUE UNITEDの活動が終わると、台湾で開催される『第45回ウィリアム・ジョーンズカップ』で若手中心の日本代表チームを率いる(渡邉ら6選手がB.LEAGUE UNITEDとジョーンズカップのロスター入りをしている)。同氏もバスケットボールに対して真摯に取り組む日本の選手たちを「教えがいがある」と好印象を抱いた様子だった。

「NBAにいた人に触れ合えるのは本当にスペシャルな時間」
B.LEAGUE UNITEDに参加を決めた理由として選手たちの多くが「刺激を得るため」といったようなことを口にした。そのことは今回、コッター氏を支えるアシスタントコーチとして遠征に加わった岩部大輝氏(アルバルク東京)と田中亮氏(大阪エヴェッサ)についても同様であった(コッターヘッドコーチの実弟でやはり若手育成の実績のあるブレイデン・コッター氏もAC陣に加わった)。
岩部氏と田中氏はB.LEAGUEでの指導経験が豊富で、選手たちとコッターヘッドコーチとの橋渡しの役割もあったが、他方で彼らも自身の将来を見据えて今回の活動に参加していたという側面もあった。
2019-20よりA東京のスタッフに加わり、昨シーズンはデイニアス・アドマイティスヘッドコーチのもと、トップアシスタントコーチを担当した岩部氏だが、2026-27からはコーチではなく「ディレクター・オブ・バスケットボール・インテリジェンス」という、チーム強化の基盤となる情報収集や分析、国内外のスカウティング、競技面における戦略立案等を担う役職に就く。
一旦はコーチの肩書は外れるものの、元NBAの指導者の補佐を海外遠征を通じて担う経験は将来のキャリア形成にもたらす影響は小さくないはずだと、32歳の岩部氏は確信を伴った口調で話した。
「『バスケ人』としての幅を広げていくというか、将来、ヘッドコーチになるとかゼネラルマネージャーになるとかいろいろな道がある中で、バスケットボールの知識や経験の広さは絶対に生きてくると思っています」
岩部氏がB.LEAGUE UNITEDのスタッフに選ばれた背景には、コッターヘッドコーチがジョーンズカップでも同職を担うため、この2つの活動を通じて同ヘッドコーチを補佐できる者がいたほうがいいという判断もあったそうだ。
田中氏がB.LEAGUE UNITED活動への参加を希望したのもまた、自身の将来的な高い目標実現へ向けて経験を積みたいという意向があったためだ。所属の大阪エヴェッサではアシスタントコーチ兼、選手の技術指導等を担う『スキルディベロップメントコーチ』の肩書も持つ田中氏は、自身の「NBAのチームでプレーヤーディベロップメントコーチになりたい」という絵図を描いている。
その中で、コッターヘッドコーチというNBA経験指導者とともに活動することができる機会は、彼にとって願ってもないものとなった。
「コッターヘッドコーチはNBAで何年もやってきたコーチで、彼と話ができる、そして彼に田中がどういうコーチングをしていて、NBAに行くには何が必要なのかなどを話すことができるのは、こういう機会でしかないと思います。今は大阪エヴェッサで働いていますが、NBAに行くにはどうすればいいかは自分で考えるしかない。やはりその環境にいた人に触れ合えるというのは自分にとって本当にスペシャルな時間だと思います」
コーチもやはり人間である、と書くと青臭さが滲む気がしないでもない。が、彼らにも自身の『先』を考える権利があり、各々の思いを持ってこうした活動に臨むことは自然なことだ。
そして岩部氏と田中氏にそれぞれの目標があるにせよ、『日本のバスケットボールのために資する行動をしたい』という思いは2人に共通したものであるはずだ。コッターヘッドコーチというNBAを知る指導者を補佐しつつ、将来ある若手選手たちの集まったB.LEAGUE UNITED遠征に参加した経験は2人にとってもまた、得難いものとなったはずだ。
文・写真=永塚和志
B.LEAGUE UNITED 2026 IN オーストラリアの様子をまとめた動画はこちら↓↓↓

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